君と恋したこの学校
斗花
秘密の隠し味~調理室にて〜
第1話
あなたとの幸せが始まってから、もう一年が経ちました。
◇◆
「大澤先輩!本宮先輩!
俺、今日から調理部にも入ることにしました!」
元気に挨拶する中野くんを見て苦笑する和政。
「中野くん、料理得意なの?」
「はいっ!
昔から両親が共働きで、よく作ったりしたんで!」
私がエプロンを着けながら聞くと、元気に答えてくれた。
「本当にどこまでもついて来るね……」
和政はそんな中野くんにため息をつきながら、この前私があげた新しいエプロンを付けてくれる。
それにすらもまだキュンとしてしまう。
私、
すごく地味な私に比べて和政は身長も高くて、顔も小さくて、すごくすごくかっこいい。
それにかっこいいのは顔だけじゃない。
軽音楽部ではドラムをやってて、そのバンドはこの前レコード事務所にスカウトされた。
すごく浮かれていいはずなのに「すぐにデビューするとかそういう訳じゃないよ」と、優しく笑って。
少しのことじゃ動じなくて、優しくて、物腰も柔らかくて、モテて当然だよね。
今年入ってきた一年生にはそんな和政に憧れて、この高校に入ってきた子もいる。
「大澤先輩っ!混ぜ具合はこんな感じですか?!」
それが、ここにいる
中野くんは和政にピッタリ密着ってくらい本当にどこまでも着いていく。
軽音楽部にはもちろん入ったし、さっきの話だとどうやら調理部にも入ることにしたみたい。
「えっと……中野くん?」
「いつきで良いです!」
卵を高速で掻き混ぜながら、和政に笑いかけた。
「中野くん、それはちょっと混ぜすぎかな?」
私は中野くんの手から静かにボールを受け取る。
「あっ!すみません!」
私の隣に寄ってきた中野くんを「いつきっ」和政が大声で呼んだ。
「大澤先輩!何でしょう?!」
嬉しそうに和政の方へ駆け寄る中野くん。
私達調理部は三年生が私と和政だけで、二年生は皆、運動部と兼部しているから、殆ど二人で活動してるみたいなものだった。
今年の一年生も私が知る限りでは三人くらいしか入らない。
本当だったら三年生は四月になったら引退なんだけど、私はお菓子の専門学校に行くつもりだし、和政も受験には力を入れないみたいだから、引退しないで続けて今はもう、五月になる。
「いつき、ちょっと、その……」
和政は下を向いて何か考える。
その考える仕草も、とってもかっこいい。
「これ、洗って」
使い終わったまな板を中野くんに手渡す。
「はいっ!喜んで!」
中野くんはチョコレートがついたまな板を冷水で流しはじめた。
「あ、中野くん?これは温水のが良いよ」
和政に小麦粉を任せ私は中野くんの隣に移動した。
「あ、そうなんですか?」
「うん。チョコは固まっちゃうから」
私はスポンジに洗剤をつけ中野くんからまな板を預かる。
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