農薬はかえって苺の味をダメにする
第33話
バレンタインデーが近付いた。
スズちゃんから一つの電話がくる。
「もしもし、蘭ちゃん?今、大丈夫?」
「うんっ、へいきー。どーしたの?」
「今年ね、詩織とチョコ作るんだけど蘭ちゃんも一緒にどうかな?」
思わぬお誘いだった。
でも、助かるお誘いだった!
晴海は彼氏と別れたー、とチョコを作る予定はないらしかったし、弥生ちゃんは就職が決まりその準備で忙しいって言ってた。
「私、いてもいいの?!」
「うん、もちろんっ!多い方が楽しいからね!」
「じゃあ、行くっ!」
そして私はゆきくんに選んでもらったお気に入りの服を着て、都心に向かった。
スズちゃんと出かけるのは初めてだったからとっても楽しみっ!
「お待たせっ、蘭ちゃん!」
スズちゃんが笑顔で手を振って私の方へ走ってくる。
「スズちゃん!
……あれ、詩織ちゃんは?」
「詩織は家で準備しとくって。これ、買い物リスト!」
そう言って出した紙には詩織ちゃんの綺麗な字が並んでいた。
「えっとー、とりあえず、スーパー行こう」
そう歩きだしたスズちゃん。でも私、思うんだけど。
「この辺に、スーパーなんてあるの?」
固まるスズちゃん。
「……へ?」
何だか先行き不安です。
ようやく見つけたスーパーで私達は買い物を進めた。
するとスズちゃんが突然叫ぶ。
「あっ!かなえちゃん!かなえちゃんもバレンタインデーの買い出し?」
スズちゃんが声をかけた相手はクリスマスライブの時に一度だけ見た秀の彼女さんだった。
「スズちゃんと、えっと、……蘭ちゃん、だっけ?」
あの一回の出会いで名前を覚えてくれていたなんて!
「大正解です!」
感動して、思わず握手した。
「かなえちゃん、何作るの?」
スズちゃんがかなえちゃんに聞く。
「まだ、決まってなくて。
とりあえず来たはいいけど、お店もよく知らないし……」
「一緒、一緒!」
即答してしまった。だって、ホントに一緒だったから。
「良かったら、一緒に買わない?」
スズちゃんがかなえちゃんに笑いながら言う。
「なんなら、一緒に作ろうよ!」
「えっ?!申し訳ないよ!」
かなえちゃんは慌てた顔をしてブンブン首を振っていた。
「大丈夫だよー、私たちも教えてもらうんだもん。
一人くらい、増えても変わらないよ!」
かなえちゃんなら一緒につくりたいと思って、思わず私も便乗する。
かなえちゃんは申し訳なさそうに笑った。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
……すごくいい子だなぁ。
「かなえちゃんは秀にあげるんでしょ?」
私は思わず聞いてしまう。
だって、秀にはもったいないんだもん!
「うん、そうだよ。蘭ちゃんは福本くんに?」
かなえちゃんの笑顔につられて私は笑顔になる。
「今年こそ、成功するもん!」
思わずピースもした。
「蘭ちゃんは福本くんの彼女、なんだよね?」
そう見えたのかな?!それは嬉しい!
……だけど、嘘は良くないね。
「ううん、違うよ。でも、好きー」
好き、とか言って超てれるっ!
顔が赤くなったな、そう思ったらかなえちゃんがまじまじと私をみる。
「蘭ちゃん、私達どこかで会った?」
その聞き方からすると、この前のライブ以外でって感じだった。
ないよ、って答えようとしたらスズちゃんが笑う。
「蘭ちゃん、秀ちゃんの妹だよ」
……そうか、顔が似てるから見覚えがある感じだったのかな?
「あんなのの妹とか私の恥だよっ!」
私は素直な気持ちをそのまま伝えた。
「でも、かなえちゃんは好きー」
かなえちゃんを見てたら思わず抱き着いてしまった。
「あいつの彼女、まともな奴はいなかったけど。かなえちゃんは最高っ!」
そうそう、中学の時の彼女なんて、本当に嫌な女ばっかりだった!
あいつ、見る目ないと思ってたのに……。
こんないい子を彼女にしていたのかっ?!
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