豪雨も時には苺を美味しくする

第29話

朝、ご飯を食べていたら秀から唐突に言われた。



「お前さ、今日消えろよ」



最初に言っとくけど私、別に今日は喧嘩になるようなこと言ってないですよ。



「……何それ」



毎朝恒例の喧嘩なのでお母さんもシカト。



「まんまの意味だよ。今日、色々あるから消えて」



「……ヤダよ!私、まだ生きたいもん!」


「お前、まじ空気読めって」


じゃあ、読める空気を作れよ。



「今日、彼女来るから」


「えっ?!か、彼女?!」



私はあまりの驚きにお母さんの方を見る。


「私は福本さんと食事してくるね」


「なんで昨日のうちに教えてくれなかったの?!」


私はドンッと箸を置いた。

しかし、秀は余裕そうにむしろ若干笑っている。



「お前は今から10分後、俺に感謝することになる」


……ほんと、ムカつくっ!



「お邪魔しまーす」


なぜか今朝はゆきくんが家に朝早くやってきた。


秀はもうゆきくんとは登校してないのに。

現に秀は既に家を出ていた。



「ゆきくん、どーしたの?」


「蘭ちゃんの説得を秀に頼まれました」



ニコッと私を見てサラッと言った。


「今日、一緒に消えようか」


……あぁ、秀!いやっ、秀お兄様!


私はあなたを兄に持って本当に感謝しますっ!



……今日だけ!


…………この一瞬だけっ!



「昨日の夜、秀に頼まれてさ。


消えるっていっても俺の家なんだけどね。

姉ちゃんもいないから、つまらないと思うけど」



いえいえ、全然構いませんっ!



「じゃあ、今日はどうすれば良い?!」


私がウキウキで聞くとゆきくんは相変わらず笑う。


「学校帰りにそのまま俺の家に来て。

絶対に!米倉家に入っちゃダメだよ?」


ビシッと言うゆきくん。男前すぎて胸が痛いです!


「はーいっ!」


◇◆


「えー?!先輩の家に行くー?!」


学校で晴海に言うと、ものすごーく驚かれた。


「うんっ!秀の彼女のおかげっ!

ゆきくんの部屋、久しぶりー」


晴海が一瞬止まった。



「え……?部屋に行くの?」


「うん。多分そうだと思うけど」



晴海はうーん、と悩んだ後、私の目を見つめる。



「私のお兄ちゃんの話だけど……」


「あっ!赤坂先輩も桐高だよねっ!」


「まぁ、それは良いんだけど……。


お兄ちゃんは女の子が来ても二人きりで部屋にはいないよ?」


「……は?」


「女の子を部屋に入れるって、そーゆーことじゃないの?

これで何もなかったら、まじでただの妹かも」



晴海は相変わらず私に現実を突き付けますね。

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