熟れすぎた苺は地に堕ちる
第3話
当時、ゆきくんと秀は中学校二年生。
ゆきくんが中学校に行ってからはほとんど二人で遊ぶことはなくなった。
私はその間、さっきも言ったように必死で女に磨きをかけた。
「弥生ちゃん!お願いします!」
「オッケー、任せて!
幸也の好みなら完全に網羅してるから!」
私が先生に選んだのはゆきくんより、6歳年上で私より8歳年上、当時大学1年生のゆきくんのお姉さん。
弥生ちゃんは英語ペラペラのキラキラ美人さん。
そしてさすがゆきくんシスターと思うほど、すっごく優しかった。
……ゆきくんにはいつも命令口調だけど。
そして、秀が偉そうにできない唯一のひと!
私の永遠の先導者!
「まぁ、今は彼女いるみたいだから別れるまで待つとして……」
「えっ?!また彼女できたんですか?!」
「またって……。
だって中学入ってからもうすぐ1年。
そりゃ幸也にも彼女くらいできるでしょ」
私が知る限り、私のいない中学二年間でゆきくんは五人の彼女をつくっている。
……意外と入れ替わり立ち代わりだ。
「ま、大丈夫!どーせ今回も長くは続かないって!」
そう励ます弥生ちゃんの笑顔はゆきくん並にキラキラしていた。
今思えば小学生がやることじゃあ、なかったなぁ……。
毎朝ランニング、マナー講座、弥生ちゃんによるお料理教室。
その他もろもろレディーになるべく、弥生ちゃんの指導のもと頑張った。
友達を誘って参加させたこともあったけど、弥生ちゃんのスパルタにみんな次々、脱落。
「いよいよ、明日は入学式だ!」
弥生ちゃん、当時大学3年生。
「はいっ!」
私はやっと!
ゆきくんと同じ校門をくぐる年齢になっていた。
「蘭、早くしろよ!フクに迷惑だろ!」
私は制服を弥生ちゃんの教え通り、丁寧に着こなす。
「よしっ!ゆきくん、待っててね!」
鏡の自分に気合いを入れた。
「蘭、頑張ってこいよ!」
今年から社会人の玄兄にそう言われて、私はガッツポーズした。
あ、言い忘れてたけど私にはお兄ちゃんがもう一人います。
玄兄の大学は地方だったんだけど、就職で東京に戻ってきてたんだよね。
「じゃ、行ってきまーす」
私は卸したての靴を履く。
「ゆきくん!お待たせ!」
もう学校は4日目だけど制服のゆきくんの姿に毎朝、胸がキューンとなる。
「うん、おはよう」
そしてゆきくんのキラキラ度にもうドキドキ!!
「フク、悪い。
今日も蘭が一緒でも良いか?」
「良いよ、蘭ちゃん、いこっか」
そう笑いかけてくれたゆきくんにもう、一発KOなんですけど!
「あ、そーだ。
これ、遅くなったけど、入学祝い」
そう言ってかわいいボンボンゴムをくれた。
「もし良かったら使って。最近、髪伸びたもんね」
あぁ、バカ秀と同じ人種とは思えない……。
「ありがとうっ!いま、つけるっ!」
私はもともと結んである髪にそのゴムをまいた。
「……どうかなっ?!」
「うん、似合ってる」
そう言ってまた笑ってくれたゆきくん。
……あぁ、ホントに幸せ!
「…あ、やべ。上履き忘れた。
わりぃ、フク。
こいつと行ってやってくれる?」
バカ秀が歩いて200メートルくらいのところで立ち止まった。
「分かった。秀、遅刻すんなよ」
そして、秀の上履きのおかげで、なんと!
二人で登校できることになったの!
あぁ、やっぱり神様は見ていてくれた!
この時は本気でそう思った。
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