恋が始まる場所

輝人

第1話 取り消されたメッセージ

夜の静けさに包まれた部屋で、輝人はベッドに寝転びながらスマホをいじっていた。いつもどおりの平穏な時間。華乃からのLINEは特に来ていなかったが、最近お互い忙しいのは分かっている。それでも、どこか寂しさを感じていた。


画面をスクロールしていると、ふと通知がポンと表示される。

「華乃:……」


輝人は一瞬画面を凝視した。LINEのプレビューには短い文字列が見えるが、それが何だったのかよく分からない。「何だろう?」と思いながらメッセージを開こうとすると、突然その通知が消える。


「ん?」


不思議に思ってLINEを開くが、そこには「華乃がメッセージを送信取り消ししました」という表示があるだけだった。


「何送ってきたんだよ……」と、思わず小さくつぶやく。


タイミングが悪いのか、それとも何か深い理由があるのか、輝人の頭の中でさまざまな考えが巡る。彼女が誤って送っただけなのか、それとも意図的に消したのか……。


送信取り消しの痕跡を見つめながら、輝人はふと、華乃が以前言っていた言葉を思い出した。

「本当は、もっと素直に言いたいことが言えたらいいんだけど、迷っちゃうんだよね」


それを思い返すと、なんとなく彼女の気持ちがわかる気がした。言いたいことがあったけど、送った瞬間に躊躇したんだろうか?それとも、見られたらまずい内容だったのか……?


そんな考えを巡らせていると、スマホが再び振動する。今度も華乃からのメッセージだ。


「さっきの、気にしないで。何でもないよ!」


短い言葉に、少しの曖昧さを感じる。輝人はその文字を何度か読み返し、少し悩んだ末に返信を打つ。


「何でもないわけないでしょ(笑)気になるから言ってみ?」


送信ボタンを押すと、しばらく既読がつかない。少しの緊張とともに時間が過ぎ、やっと華乃から返事が届く。


「やっぱり、今は言えない……でも、またちゃんと話すね。」


その一言に、輝人は胸の奥が少しだけくすぐられるような感覚を覚えた。華乃が何を伝えたかったのか、それは分からない。でも、いずれ彼女が言葉にしてくれるのを待つことにしよう――そう思いながら、輝人はスマホを置き、静かな夜に身を任せた。

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