陽炎
要想健琉夫
陽炎
―――続「小鳥達の畔」―――
――今年の九月中旬の時の、話だ。
僕は、
何でも、母さんが思い立ったが即行動の神経で、九月のお彼岸に行くとの事柄で、つまり、お墓参りに行く事に成った。
身支度をある程度、熟して、僕はリュック・サックに、読書用の文庫本二冊を入れて、一階へと降り立った。
母さんは既に準備を済ませていた様で、玄関前で悠々と靴を履いていた。
僕は前髪を鏡を見て弄りながら、靴を履いた、それから、僕は
扉を開けてみると、蒸し暑い、突き刺す様な太陽の光を感じた。
僕は堪らず、そう呟いた、
「――あっつ!」
そして、母さんと僕はお互いの荷物をそれぞれ、持ちながら、車へと乗り込んだ。
母さんが車のエンジンを蒸し、僕はそれと同時に、シートベルトを締めた。
そうして、僕らは住宅地から、車をとばした。
何時もの道のりを景色と共に走り抜けて行く内に、僕は退屈を感じだした、景色を優雅に見ようにも、その時は、地球温暖化の
僕はそんなむさ苦しい現実を逃避する為に、リュック・サックから、一冊の本を取り出した。
それから、本を開いて、祖父母の家に着くまでの間を僕は本を読み耽る事にした。
道のりが中間を差し掛かった頃だろうか、僕らは何時の間にか、高速道路にへと入っていた。
車は速度を上げていき、颯爽と景色を流しながら、走って行く。
僕はそれを、本の隙間から、見たりして、再度読書に耽った。
この間で僕は、或短編集の中の、一作を読み切った。
僕は、車酔いをしない様に努めながら、続きを読む事にした。
暫く、道のりを走っている内に、僕らは祖父母の家の前に着いていた。
僕は、やっと着いたな、何て思いながら、文庫本を閉じ、車を降りた。
その際、母さんは、
「座るだけでも、結構疲れたでしょ?」
と苦笑気味に、言ってきた、僕は頷いて、
「うん」
と言って、祖父母の玄関への、石段を母さんと上った。
母さんは先頭を
母さんは、引き戸を左手(この際どちらでもよかったが)で、引き、開けて、僕と母さんは、玄関に脚を踏み入れた。
母さんは、玄関に着いた途端、気の抜けた様な声で言った、
「はぁぁぁ――着いた」
僕は母さんに心の中で労わりの心持ちを浮かべながら、平日の一味は確実に違う祖父母の、家の空気を吸い込んだ。
祖父母の家には、何時も休日に行く為、平日に行く事は初めてであった。
僕はそんな何時もと幾分か違う空気を感じながら、母と共に靴を脱いで、玄関の上へと上がった。
廊下から見える、二つの和室には、祖父母は居らず、僕らは廊下を渡り居間への扉を開けた。
すると、扉を開けて、後ろの台所辺りに、共に椅子に腰掛けて昼食を食べていた、祖母と祖父が居た、僕は手を軽く挙げて祖父母の方に挨拶した。
「おお、来たか」
祖父がそう言って、僕に手を挙げた、祖母は、
「いらっしゃい」
そう言ってきた、僕は気の抜けた溜息を吐いてから、居間のソファーに凭れ掛かった。
祖母はそんな僕を見て、意に介さず、こう訪ねた、
「何か食べる?」
僕は、欠伸をしながら、祖母に言った、
「ラーメンが食べたいな」
暫くして、一通り落ち着いた様子で、僕と母さんは快活に過ごしていた。
そんな中、台所から祖母の僕を呼ぶ声が聞こえた、
「出来たよ〜」
「ああ、うん」
僕は読んでいた文庫本を閉じて、リュック・サックの近くに、文庫本を置いて、立ち上がった。
白い色のそのテーブルには、湯気立ったラーメンが置いてあった、おまけに胡椒も、僕は、それを横目にしながら奥の引き出しから鰹節のパックを取って、席に着いては、ラーメンに鰹節を撒いた。
僕は、箸を持ってから、言った、
「いただきます」
続けて祖母は言った、
「はい」
僕は、スープを口にしてから、ラーメンをあっという間に平らげた。
それから、何やかんやあり、餃子や白米などの、おかわりを済ませた、僕は、暫く、本を片手に、墓参りの支度をしていた。
祖母が巨大なバケツを持っていたり、線香を持っていたりしていたのは、その為であっただろう、後何か草か花も持っていたな。
そんな、お墓参りの支度を終わらせて、僕と母と祖母は、家を出て、車に乗り込んだ。(祖父は留守番をしていた)
車内は、相変わらず蒸し暑く、母さんはエンジンをかけたと同時に、エアコンを入れた、それから僕らはお墓まで車をとばした。
車が走行中、祖母と母が世間話に華を咲かせている間、僕は本を読んだり、読まず、会話に参加したりした。
彼これ、体感十分ほど、走った辺だろうか、急な坂道が連続で出てきた、僕はこの坂道に嘗ての見覚えを感じながら、言った、
「坂道の連続だね」
車は斜面を乗り越えていき、僕らは墓場の駐車場に着いた。
僕らは、車を駐車し終えると、夏らしい外に出ていった。
墓場は、高い所にあるからか、景色はまぁまぁ良く、僕はそれを見ながら、祖母と母の背を付いていき、線香を付けに行った。
向こう側に、お地蔵さんが立ち並んでいる、ちょっとした小屋の前でバケツの中、黒く焦げた数々の紙の上で、祖母は新聞紙をバケツに入れてから、点火棒を取り出して、そして点火棒を点火しようと引き金を引いた、だけど、点火棒はそう簡単には付きやし無かった。
祖母は、目を細めながら、
「あれ?何で付かないの?」
と言った、僕はちょっと貸してと言ってから、点火棒の引き金を強く引いた、点火棒からはちょっとした炎が出てきて、それは新聞紙に燃え移っていった。
母さんは手持ちの線香を火の居所に寄せて、線香に火を付けた。
その間、僕はそう言った、
「多分このご時世、子供やお年寄りの人達が間違えて点火しない様に、強く押し込まないと、火が出ない様に成ってるんじゃないのかな?」
祖母は、納得した様子で頷いてから、線香に火を付けた、僕も続けて火を付けた、線香からは嫌味も無い穏やかな香りがした。
僕はそれを嗅ぎながら、お地蔵さんの前にそれぞれ、線香を上げた。
そうして、僕らは線香を上げ終えて、手を合わせた。
小屋から出て、僕らは持参したバケツを持ちながら、お墓の前にへと向かった。
快晴の空の下、立ち並ぶ墓達は、何処か物寂しくも、ノストラジックを感じた。
僕らは、お墓の前に着いて、少し寂れたお墓を眺めた、お墓の前には余程熱いのか、
僕は祖母から受け取ったバケツの水を柄杓に移し、お墓に水をそっとかけた、墓石は輝きを帯びて、太陽の光が反射していた。
そして、母さんが持参していた、草か花を僕に手渡してきた、僕はその草が挿された、場所に水を注いでから、草を新しいのへと取り替えた。
それから、僕らは、墓石に向き合い、手を合わせた。
此処には、僕のご先祖様、僕を繋ぎ止めてくれた、数多の家族が居る、僕は何だかその事実に、感動して、ある句を思い出した。
陽炎や 塚より外に 住むばかり
「
陽炎 要想健琉夫 @YOUSOU_KERUO
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