第5話

「よろしかったら、私のをお貸ししましょうか?」


そう言った私に、

「えっ?」


老人は訳がわからないと言うように聞き返してきた。


「確か、1000円くらい残っていたと思いますので…」


私はカバンから財布を取り出すと、マナカを老人に差し出した。


「えっ…いや、そこまでしなくてもいいですよ」


差し出されたマナカに老人は戸惑っている。


「いいですよ、どうせ1年半くらい使ってないですから。


このまま財布の肥やしになるよりも、マナカも使ってくれた方が嬉しいと思いますから。


あっ、名義に関しては大丈夫ですよ」


そう言った私に、

「…じゃあ、お言葉に甘えて」


老人は呟くように言うと、私からマナカを受け取った。

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