丑三つ刻の愉快な仲間たち

怠惰

丑三つ刻に現れる愉快な仲間たち

彼、彼女らは丑三つ刻になるとどこからとも無く現れる。

いつからここに現れるようになったか…もう昔過ぎて忘れてしまった。


彼、彼女らに初めて出会った当初は腰を抜かして動けなくなってばかりいた。

でも今は違う彼、彼女らも私の事を対等に扱ってくれるし、私も彼、彼女たちのことは仲間だと思っている。


あ、後3分で丑三つ刻になる。

私は今日もその仲間たちを部屋に受け入れる為の準備をする。


部屋の隅に手鏡を置き、対角線上の隅にも鏡を置き合わせ鏡の様な状態にし、霊道をつくる。


時計の針が丑三つ刻を指し示す。


すると霊道からモヤのようなもの2つ出てきて段々と形を形成する。


形作られたのは子犬にコウモリの羽が生えたこうもり子犬と尾が8本ある子狐だった。


「よう、睡蓮スイレン。今日もオレラが会いに来てやったぜ〜☆」

「アタシ達今日はどんな事をするのかしら?」


子犬のコヌちゃんと子狐のエイコンちゃんが私に話しかけてくる。


「おはよう。みんな元気だった?」


私はいつも通り仲間に挨拶する。


「おう!俺等は元気だったぜ☆!」


「アタシもまぁまぁだったわよ」


元気よく私の仲間たちは返事をする。

それにしても夜遅いのに元気だな〜。


やっぱり妖怪だから時間感覚とかないのかな?

私は密かに疑問を抱きつつ仲間たちと話す。


「それはよかったよ、ちなみに私も元気だったよ」


「よかったわ。睡蓮スイレンが元気じゃないとアタシたちは暇だものね」


「ああ!でも睡蓮本当に元気なのか?なんか最近、睡蓮からは元気がない匂いがするぜ☆?」


うぐっ!やっぱりケルちゃんは鋭いなぁ。

さすがは犬だよ。


「やっぱケルちゃんにはバレちゃうか〜。実はね私最近学校行けてないの」


「あら。どうして言ってないのかしら?」


「それがさ〜、実は私いじめられてるんだ。クラスメイトからさ。それが嫌で学校に行ってないの」


「おいおい、俺たちの睡蓮をいじめるなんてよ。許せないぜ☆!」


やっぱりこうなった。

私がいじめられていることを伝えると騒ぐと思っていたのだ。

ギャーギャーすごい騒いでるよ。でもなんか元気貰えるな。


「はーい、みんな。落ち着いて落ち着いて。いじめられているのは私にも原因があるんだから」


「はぁ?アンタなにを言っているのよ!アタシの大事な友達にいじめられる原因なんてないわよ!」


「そうだぜ☆!睡蓮がいじめられる理由なんてない!でもなんで睡蓮はいじめられてるんだ?」


私は学校でのいじめられている時に言われたセリフを思い出す。

確か…………水をかけられている時に女の子が「貧乏人は学校来るな!」って言ってたような気が……


「確かね。私の家があんまり裕福じゃないからだと思う」


「はぁ!?なんだそれ、そんなんでいじめるとかバカじゃないのか?」


「そうよそうよ!」


2匹はそう言い話し合いを始める。

面倒くさくならなければいいけど…


お?どうらやら話し合いが終わったらしい。


「俺達決めたぜ☆!睡蓮が学校に行けるようにお前んちを金持ちにしてやる!」


「ええ!睡蓮に元気がなければ困るのはアタシ達だし、睡蓮には元気でいてほしいもの!」


「2人とも………ありがとう。すごく嬉しいよ!でも具体的にどうやるの?まさか考えてないとかなおよね?」


「おう!安心してくれ!エイコンと話し合ってそこもバッチリ決めたぜ!」


「ええ、睡蓮…アンタにはね。悪霊狩りをしてもらうわ!」


悪霊狩り…いかにも怪しくて危なそうな名前をしている。


「悪霊狩りってなに?そもそも悪霊狩りをしてお金元になれるの?」


「ええ、もちろんよ。悪霊っていうのは成仏しきれなかったた霊の事を言うのよ。そしてその悪霊を成仏させるとお金を落としていくのよ」


「へぇ~、そうなんだ。それでどうやって成仏させるの?」


「それはな!死ぬ前にやり残した事を変わりに叶えてやんだよ!そしたら悪霊はこの世への執着を無くして成仏するんだぜ☆!」


私は2人の説明を聞き頷く。

別に戦うわけじゃないしそんなに危なくなさそう!

という訳で私は悪霊狩りを始めることにした。


「よぉし!そうと決まれば早速行くわよー!」


「え?今から行くの〜!」




▲▲▲▲▲▲



「着いたわよ!ここが悪霊の住処なのよ」


エイコンちゃんに連れられてきたのは、ゴミ屋敷とかそういう不潔や不吉な物とは無関係の小綺麗な普通の家だった。


「本当にここなの?なんか全然そんな気しないんだけど……」


私は思わず思った事を口に出してしまう。

エイコンちゃんには申し訳ないが本当にいるのかかなり疑わしい。


「なによ!アタシが間違ってるっていうのかしら!?」


「いやそんなつもりはないけど…本当にいるのか気になって」


「ここには確かに悪霊がいるぜ☆!俺も前に見たからな!」


そう言い2人は私を置いて中に入っていく。


「ちょっと待って〜!」




▲▲▲▲▲▲


家の中に入るとやっぱり悪霊がいるとは思えなかった。

人が住んでいる雰囲気こそないけれど小綺麗で清潔感がある。

するとガタッという物音が聞こえた。


私とエイコンちゃんとコヌ君は近くにいるので違う。


「やっぱり居るんだ悪霊…」


私が小さく呟く。


「いったでしょ!ここには女の悪霊が居るんだって

!」


エイコンちゃんは私よりも大きな声でそう話す。


…………あれ?なんかエイコンちゃんの後ろに何かがいる。


「あなた達私の家に何で入ってきてるの?」


生気のない女性の声が聞こえた。


「何も用がないのなら出てって…」


しかしこちらには敵意が無いようで話し合いで解決してるようにも思える。


私は意を決して女性の悪霊に話しかける。


「あの!私達は貴女に用があってきたんです!貴女は幽霊で何かこの世に未練を残しているんですよね!それを解決したいんです!」


私はあらかじめエイコンちゃんとコヌちゃんには話さないように言っておいた。そのため彼女と私の対談の様な形になる。


「そうなの、未練ね……。確かに私はこの世に未練がある。でもあなた達の事をよく知らない以上姿を見せることもないし未練を明かすことも無いわ…」


私は彼女の発言を聞き確かにそうだなと思ったので私達は自己紹介することにした。


「分かりました。では自己紹介をさせていただきます。私は睡蓮という名前で14歳です。そしてこの子たちはエイコンちゃんとコヌちゃん。私の大切な仲間です」


「自己紹介ありがとう…。でもどうして未練を解決しようとしてくれるの?」


私は思わずウグッといった反応を取ってしまいそうになった。

お金稼ぎだなんて言えないので私は仕方なく嘘を付くすることにする。


「実は私はこの子たちから貴女の様な方達がいるとは聞いて、ぜひ力になりたいなと思ってここに来ました」


「そう…分かったわ。」


彼女はそう言い私達に姿を見せてくれる。


「綺麗………」


彼女の顔立ちは正に左右対称で可愛らしい本当に10000年に一度の美女と差し支えない程に整ってた。

スタイルも良く私も成長したら彼女の様になりたい!そう思わず得ない美貌の持ち主だった。


「お世辞はやめて頂戴。それで私の未練だったわね。私の未練はね、その言い辛いんだけど………」


私はゴクッと生唾を飲み込む。


「可愛らしい服が着てみたいの…。恥ずかしいんだけど生前の私は貧乏でね。ずっと仕事ばかりで可愛らしい服を着たことがないの…。お願いできるかしら…」


可愛らしい服…!腕がなる。

でも大丈夫かな私の家はお金がないし…

まぁでも私のお小遣いで服の材料を買って作ればいいか。

幸いな事に私の裁縫の腕は学校の先生も唸るほどだ。


「分かりました!私達にお任せください!」


私達はその後に少し話し交友を深め解散した。

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丑三つ刻の愉快な仲間たち 怠惰 @taida2434

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