所要時間:10分 三人声劇「みやこ、はじめてのおつかい!」
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登場人物
主人公みやこ
みやこの母
謎のオオカミ ロウ
所要時間 10分ほど
ここはとある田舎町。みやこは街中に初めてのおつかいに向かおう
としていた。
母「いい?みやこ。知らない人には着いていっちゃだめよ?
どんなに親切そうな人でもダメ。怖い目にあっちゃうかもしれないからね」
みやこ 「はーい!」
母「ほんとにわかってる?いいわね?絶対に着いていっちゃだめだからね!」
みやこ 「わかってるよぅ。しらない人にはついていかない!だよね!」
母「わかってるならいいけど、気をつけてね」
みやこ 「はーい!いってきまーす!」
【家を出ていく音】家を出てく音
母「ほんとうに、大丈夫かしら… …」
***
みやこ 「えーっと、たしかこのみちをみぎに… …」
??? 「そこのお嬢さん?」
みやこ 「ん?あなたは?」
??? 「急に声掛けてすまんのぅ。わしはロウ。そちの名はなんという?」
みやこ 「みやこ!」
ロウ 「そうか、みやこか。良い名じゃ。どうかね。今からわしと茶でも飲みにいかんか?」
みやこ 「おかあさんから、しらない人にはついていっちゃだめって言われてるからいきません!」
ロウ 「ほう、しかし、わしは人ではないぞ?オオカミの化身なんじゃよ」
みやこ 「へ!? オオカミさん!?」
ロウ 「その証拠に、ほれ、この大きな耳に大きなしっぽ。人ではないのなら大丈夫じゃろう?」
みやこ 「オオカミさんオオカミさん!」
ロウ「よしよし、着いてくるか?」
みやこ「うん!」
母「だめーー!!!!」
みやこ「わあ!おかあさん!?」
母「人じゃなくてもついて行っちゃダメ! ましてやオオカミなんて……、ダメダメ!」
みやこ「でも、やさしそうなオオカミさんだよ?」
ロウ「そうじゃよ。わしはそんじょそこらのオオカミとはちがう。良いおおかみさんじゃ。ほれ、そちもわしのしっぽを堪能するがよい」
母「ぐっ、確かにふわふわのしっぽ……、けど、私はみやこの母親!こんなところで屈するわけには!」
みやこ「わあ!オオカミさんのしっぽ、もふもふー!」
母「ああ、みやこ……、もう懐柔されてる……」
ロウ「ふふふ、わしは毎日欠かさずブラッシングをしているからのう」
母「ぐぬぬ」
ロウ「ほれほれ、遠慮せんと堪能するがよい」
母「……だめっ、買い物いくよ、みやこ。お母さんもついていってあげるから」
みやこ「えー!もっとオオカミさんとあそんでたいー!」
母「夕飯が遅くなっちゃうでしょ? ほら、行くよ」
みやこ「うーん、オオカミさん、またねぇ」
***
母「よし、足りないものは買えたし、あとは変えるだけね」
みやこ「オオカミさんいるかなあ?」
母「どうだろうねえ」
ロウ「おるよー」
母「うぎゃっ! いつの間に!?」
ロウ「ふっふっふ、ずっと前からつけておったんじゃよ」
母「すみませーん、ここにストーカーがいまーす」
ロウ「警察を呼んだとて無駄じゃよ。わしは一部の人間にしか見えん存在だからのう」
みやこ「そうなのー_」
ロウ「ああ、そうさ。つまり、わしをもふもふできる人間も限られている、というわけじゃ」
みやこ「えー! もったいない! こんなにもふおふしてるのに」
ロウ「はっはっは! 嬉しいことを言うてくれるではないか。それそれー」
みやこ「きゃあ、くすぐったい~」
母「やめてください。うちの子になんてことするんですか
ロウ「なにって、そちの娘と戯れてるだけじゃが?」
母「いたいけな少女なんです。変なことを覚えたらどうするんですか」
ロウ「ちょっとばかし過保護すぎるんじゃないかのう」
母「母親として当然のことをしているまでです」
ロウ「そんなことを言うて、先ほどからチラチラとわしの尻尾に目を向けておるではないか」
母「そ、そんなわけ」
ロウ「ほれほれ、遠慮せず存分にモフるがよいぞ」
みやこ「お母さん、オオカミさんのしっぽ、すごくもふもふだよー!」
母「んんっ、仕方ないわね。それなら、ちょっとだけ」
ロウ「どうぞどうぞ」
母「……では(さわさわ)……や、やっぱり想定した通り、いや想定以上の手触りの良さだわ。一目見た瞬間にわかった上品さを残したなめらかな毛並み、うちで飼ってる兎にも負けないくらいにスベスベしてるう!時折、ゆらゆら揺れるのも可愛すぎる! これまさに、至福の時ィ! これは永久にもふもふできるわ……、ぐへへ……」
みやこ「お、お母さん……?」
母「はっ、や、やだ。私ったら、ついうっかり……」
ロウ「ほっほっほ、思わず内なる声が表に出てしまうくらいに、わしの尻尾を気に入ってくれたんじゃな」
母「くっ、小癪な真似を……」
ロウ「まあまあ、わしとそちの仲ではないか」
みやこ「ええ!? オオカミさんとお母さん、知り合いだったの!?」
ロウ「お? 言ってなかったかのう?この子がまだ幼いころからの知り合いじゃよ」
みやこ「へー! そうだったんだ!」
母「もう昔の話よ。今もここにいるとは思わなかったけど」
ロウ「わしはアヤカシじゃよ。悠久の時を生きるからな」
(ロウ、少し寂しそうな目をして空を見る」
ロウ「ほれ、そろそろ日も暮れる。また会おうではないか」
みやこ「えー、やーだー! オオカミさんともっと話してたいー!」
ロウ「ふふ、そういってくれるのは嬉しいのぅ。けど、時間は刻一刻と過ぎ去っていくもの。人間の時は有限じゃ。わしらアヤカシと違ってやれることはごくごく少ない。一ミリも無駄にしたらいかんぞ?」
みやこ「オオカミさん、なにをいってるのか、よくわからないよー」
ロウ「そちも大きくなったらわかるよ。それじゃあ、またのー!」
みやこ「あっ! いっちゃった……」
母「そうね、行っちゃったわね……」
みやこ「また会えるかな?」
母「うん、きっとね」
みやこ「だよね! わあ、次オオカミさんと会えるの楽しみだなあ!」
母「うんうん。それじゃあ、家帰って一緒にカレーつくろっか!」
みやこ「カレー! わあ! わたし、お母さんの作るカレーだーいすき!」
母「ふふふ、ありがとう」
N
こうして、みやこははじめてのおつかいを終えた。
家に帰ってから母親と共にカレーを作りながら、ロウの話をたくさん聞いた。
また再びロウに会える日を願いながら、みやこはその日眠りについたのだった。
完
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