第12話

 朝起きて、枕元に置いてある水を飲み、まずはトイレに座る。


 リビングには人が、考えたくないけれど、デブがいる気配がするので、まだドアを開けていない。


 ゆっくりとトイレマットに視線を移す。


 デブの毛とか落ちていたら怖すぎる。


 だが、目に付くところに毛は落ちていない。


 トイレットペーパーが三角折りになっている。


 便器は汚れていない。


 むしろ、いつもより奇麗な気がする。


 デブがやった? 


 しっくりこない。


 顔を洗い、髪を整え、着替えてから、いつもと同じ自分を意識してリビングのドアを開けた。



 デブは絨毯の上に敷いた布団で寝ている。


 深緑色の枕と同じ色の上掛け布団。


 枕の横にテレビのリモコンが置かれている。


 テレビだけではなく、枕も布団も持参とは。


 決めた。


 とりあえず、見なかったことにしよう。

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