第10話

「ちょっと待って。テレビ消して」



「なんでよぉ」



 語尾が上がる沖縄の方言。



「なんでって、ここは私の家だし、テレビの音嫌いだし」



 デブの黒目が再び私にむけられた。


 太っている人は目が細いのが一般的で、このデブもそうだ。


 だが、え? という顔をするとまぶたが持ち上がり、若干だが目は大きくなる。


 ましな顔になる。


 ということは、肉が落ちればそれなりになる、ということだ。


 それにしてもデブの肌、つるんとしている。


 うらやましく、思わなくもない。


 私も20歳前後は良い感じに顔がぴちぴちだったけれど、最近、頬がこけてきている気がする。


 だからと言って、デブになりたいとは微塵も思わない。


 そんなことより、つるんとしているということはデブはうちのシャワーを勝手に浴びたのだろうか。


 デブだってひげは生えるだろう。


 うちにはひげ剃りはない。


 まさか持参? 


 泊まる気満々? 


 デブが着ている黒いTシャツには「EXIT」の文字。


 出口と書かれたTシャツを着ているのに、出口から出ていかないデブ。


 あれ? デブは昨日、サーフボードが描かれた青いTシャツを着ていたような。

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