子供のころに告白したことを美人な幼馴染にからかわれている俺。ある日俺が事故に遭い記憶が少し飛んでしまったことを知った幼馴染「私が君の彼女だよ?」俺「嘘じゃん」

水鏡月 聖

第1話 子供の頃の約束

*火曜日

教室の放課後。教室の出入り口付近で妃那乃と紗千香がしゃべっている。その横を通って教室を出ようとする参治。妃那のが振り返り話しかける


妃那  あ、参治。メール見た?


参治  メール?


妃那  今日の晩御飯、うちだって


参治  またかよ


妃那  七時ね


参治  わかったよ


紗千香 え、なに? どういうこと?


 *紗千香、ふたりの顔を見る


参治  ああ、だから今日の晩飯は妃那乃の家でくうって話だよ


紗千香 え、だからさあ


妃那  ああ、ごめんごめん。紗千香は知らないんだっけ? 参治とあたしは家隣同士でさ。両親も仲いいからたまに夕食どっちかの家で一緒に食べるんだよね。いわゆる、幼馴染ってやつ?


紗千香 そうだったんだ。どうりで仲いいわけだ。わたしてっきり二人は付き合ってるのかと思ってた


参治  ぐえ、マジかよ。俺たちそんな風に見えてた?


紗千香 でもまあ、幼馴染なんてほとんど付き合っているようなものよね


妃那  やだあ。そんないいもんじゃないわよ


紗千香 でもひとつ屋根の下で一緒に遊んだり、毎朝起こしに来たりするんでしょ?


妃那  ちょっと、そんなのマンガの読みすぎよ。あるわけないじゃないそんな話


参治  そうだよ。こいつとはただの腐れ縁さ。


紗千香 でもさ、二人仲いいよね。


妃那  だってさあ、仲悪いと気まずいじゃん。家も隣でしょっちゅう顔を合わせるし、親だって仲よくていやでも顔を合わせるんだから、あたし達が仲悪いと気まずくなるでしょ


参治  そうだよほんと。だから親の前でも常に仲いいふりをしてなくちゃならないからな


紗千香 じゃあ、仲がよさそうに見えるのは『フリ』ってこと?


参治  まあ、大体そんなところかな


 *妃那、ちょっと嫌そうな顔をする


妃那  ちょっとお。よく言ううわよ。フリ、なんて言ってるけど、こいつ小さい頃にあたしに告白してきたの


参治  え、あ、おい。それは……


紗千香 え、なになに?


妃那  こいつさあ、前に家の近所の公園であたしに告ったのよ


*妃那乃、参治の物まねをしながら


妃那 「おれは、妃那乃と家族になりたい!ずっと妃那乃といたいよ!」とか言っちゃってさ


参治  おい、もうその話やめろって。いったいいつまでその話引っ張るんだよ


妃那  だって、事実じゃーん


紗千香 ひゅーひゅー


参治  紗千香ちゃん、違うんだって。その話、ずっと小さい子供のころの話だぜ。コイツ、ことあるごとにそんな昔の話蒸し返すんだよ


紗千香 なーんだ。子供のころの話かあ


参治  そうそう。もうずっと前のはな――


紗千香 それで、今は?


参治  え?


紗千香 今は、恋人とかいないの?

 *参治、妃那乃のことをちらりと見る


参治  今もなにも、俺はずっと恋人募集中だからな。誰か、いい人がいたら紹介してくれ


紗千香 うーん。考えてみる


参治  おう、頼んだぜ


 *参治、挨拶をして立ち去る。紗千香と妃那の二人きりになる


紗千香 とか何とか言ってもさ、妃那乃と参治君はホント仲いいよね


妃那  やめてよ、そんなんじゃないんだからさ


紗千香 じゃあ、私告ってもいいかな?


妃那  え?


紗千香 だって参治君かっこいいじゃん。それとも、ずっと一緒にいられなくなるのはいやなのかな?


妃那  いやいや、そんなことないって、そんな、好きにすればいいじゃん


*参治、帰り道。


参治  まったく。いつもいつもああやって妃那乃にからかわれるの、何とかしたいよなあ

 告白したって言っても、随分と昔の話だし、いい加減にしてほしいよ


*公園の前を通りがかり、想いを馳せる。


参治 ――たしかこの公園だったな妃那乃に告白したの。子供のころ、妃那乃の母親の作ってくれたハンバーグがものすごくおいしくて、こんな料理が食べられるなら妃那乃の兄妹になって一緒に住みたいって言ったんだっけ 子供ながらに馬鹿なことを言ったもんだ。おかげで未だにからかわれている


 ――おれは、妃那乃と家族になりたい!ずっと妃那乃といたいよ!


*参治、思い出し笑いをする。ふと視線を上げ「おや、あれは?」とつぶやく

*シーン切り替え、すっかり日が暮れている

 

参治 しまった、すっかりはなしこんでいたらもうこんな時間だ。妃那乃家に行くのは七時の約束だったっけ。今からなら十分間に合うだろうけど、一度家に帰ってシャワーくらい浴びときたいよなあ


*参治ぶつぶつと考え事をしているせいで周りを見ていない。急ぎ足で走る

    

   赤信号の横断歩道、車の急ブレーキ音

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