バ美肉したのに五秒で配信を切ったら何故か大人気になっていたんだけど誰か助けて
九戸政景@
バ美肉したのに五秒で配信を切ったら何故か大人気になっていたんだけど誰か助けて
「よし、これで準備オッケーだね」
夜、僕はパソコンの画面を見ながら独り言ちた。画面の中には金髪のツインテールの女の子が映っており、僕の顔の動きに合わせて女の子は同じように顔を動かした。
「本当に最近の技術の進歩ってすごいんだなあ……生徒達が話題に出すのも納得だよ。まあでも、だからといって授業中に私語してもいいことにはならないんだけど」
先月の授業中を思い出してため息をつく。高校教師として僕は現代文の授業を受け持っているけれど、少し女顔な上に童顔で、背丈も男性にしては小柄な事もあって僕は生徒達から本名の
そんな中、いま世間でなにかと人気があるというVTuberの話を授業中にしている生徒がいて、その子達を注意したのだけれどVTuberも知らなそうなのに話に入ってこようとするなと言われてしまい、私語を注意しただけなのにと少し悲しくなってしまった。けれど、VTuberについて知らないのはその通りだったので、僕は知るにはまず自分がそれ自体に触れてみようと感じて色々なVTuberの動画や配信を観た。その結果、少しだけやってみたいと思ってしまい、誰かにガワを作ってもらえないかと思ってSNSでそれらしい人を探した。
すると、有償ではあったけれど作ってくれるという人と出会い、昨日ついに僕のVTuberとしての姿が届いて今日は初配信をする予定なのだ。
「うぅ、でもやっぱり緊張するし、すごく恥ずかしいな……」
元来恥ずかしがり屋の僕は自分から何かをするという事が全然なかった。けれど、そんな僕が自分からやってみたいと思えたんだ。だからこそ、全力でやろう。この姫野リンのガワを作ってくれたママのためにも。
「とりあえずマイクもカメラもよし。配信の枠も取ってたし、一応SNSでアカウントも作って宣伝もした。だから、一人くらいは興味を持ってきてくれたら嬉しいな」
刻一刻と配信開始の時間が迫る。そして夜九時、配信開始の時間になって、僕は蓋絵と呼ばれる画像を表示しながら配信開始のボタンを押した。そして蓋絵を取って話し始めようとした時、視聴者数が見えてしまい、恥ずかしがり屋の性質が急に騒ぎだしてしまった。
「や、やっぱり無理ー!」
配信開始から五秒で僕は配信終了のボタンを押し、そのままカメラもパソコンの画面も切った。
「はあ……大失敗だ。せっかく興味を持ってくれた人がいたのに、申し訳ない事をしちゃったなあ」
恥ずかしがり屋とはいえ、配信を五秒で終わらせる人もいないだろう。きっと興味を持ってくれた人もこれには呆れているはずだ。
「……このまましょんぼりしてても仕方ない。とりあえず寝ようっと」
僕は椅子から立ち上がってベッドに入り、沈んだ気持ちのままで眠りについた。そして翌日、せっかくの休日なので何かしようかと思っていたその時、SNSの通知が妙に多いことに気づいた。
「あれ、なんだろ……って、ええ!? な、なんでこんなにフォロワーが増えてるの!?」
昨日大失敗したはずの姫野リンのSNSのフォロワーが100倍ほどになっていた。色々調べてみると、あの五秒の配信を観ていた内の一人がどうやら人気のVTuberだったらしく、その人発信で色々な人があの五秒を観たようだった。
「え、ええ……」
声が可愛いや五秒の奇跡などあの大失敗を褒める声が多く、調べている内にもフォロワーやチャンネルの登録者数がどんどん増え、それによる通知が鳴り止まなかった。
「な、なんでこんな事にー……!」
でも、この時はまだ知らなかったのだ。この五秒を観ていた他の人達の存在、そしてその人達との関わりによって僕の人生が180度変わってしまう事を。
バ美肉したのに五秒で配信を切ったら何故か大人気になっていたんだけど誰か助けて 九戸政景@ @2012712
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます