第3話
昨日、急に連絡が来た時は思わず背筋を伸ばしてしまった。
彼女は私の中学からの同級生で、初めて私の世界に足を踏み入れた人。
今日はそんな彼女と買い物だった。
電車を降りて、乗り換えのために移動しながら、私は隣を歩く加賀野のことを盗み見る。
「環状線ってよく分からないよねー」
そう言う加賀野は、今日もおしゃれだ。服は寒くないのかなと思うけど、肩に掛かる髪の毛は丁寧にセットされて、薄ピンクに塗られた唇が季節外れの桜を思わせる。目元もよく分からないけど綺麗に、丁寧にメイクが施されている。
ある程度自分の世界で生きられたらいい私とは正反対の人。常に誰かと関わることができる人。
誰これ構わず関わりすぎて、自分の抱いている感情が虚しくなるけど。
「私はJR自体がよく分からない。だって急に分離するじゃん」
「あー分かる。なんか情報多いしね」
そう言って笑いかけてくれるのが、私だけならいいのに。なんて、面倒な人間だな、と自分でツッコミながら、乗り換えの電車に乗る。
環状線になれば、人も多くなって、私は加賀野から離れないように気合いを入れる。
「やっぱ正月明けて結構経ってるけど人多いね」
「学生は多いよね」
確証は無いけど、私がなにをやっても受け入れてくれるであろう加賀野。この人なら、なにも気張らず、ありのままでいられる。わざと面倒くさいことを言っても、笑って返してくれる。どこまでも優しい存在。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます