第187話 もふもふ親子?

 ちょっと衝撃的な状況を知ってぐったりしつつ、もふもふ教布教計画は進行中。


「みぅ」

「みぅ?」

「みぅ!」

「みーぅ……」

「みみぅ!」


 ……だいぶ騒がしいけれども。


「モフタマを創り過ぎちゃったなぁ」


 草原の一部を柵で囲い、そこをモフタマたちの一時的な居場所にした。もふもふ教支部ができたら、そこに移動させる予定だ。


 すでに創ったモフタマたちは、囲いの中をコロコロ転がったり、跳ね回ったりと、忙しない。

 もふもふ教支部が完成してから増やせばよかった。


「……まあ、いっか。眺めてるだけで癒やし効果あるし」


 モフモフの集団、可愛すぎだろ。

 ほのぼのとしてたら、バサバサッと羽ばたく音が聞こえてきた。

 空からエンドが降りてくる。今日はリルの草原に遊びに来ていたようだ。


 エンドは普段、ダンジョン内で農地を管理してる狼族獣人たちの監視をしてるから、ここにいることは結構珍しい。

 気分転換かな?


『あれ、エサ場?』

「エサ扱いはやめてくれ……」


 モフタマたちがいるところを見下ろして、エンドが首を傾げる。

 確かに、エンドのサイズを考えたら、囲ってるところがエサ場みたいに見えてもおかしくないけど! あの子たちは、新しい仲間だから! エサじゃないぞ!


『食べてもお腹の足しにもならないよ』

『そうだね』


 リルの冷静な一言に、エンドが即座に頷く。

 ……ひどい。結局、エサ認識から変わってないじゃん……。


『捕まえるのが難しいから、アレを食べるのはエネルギー消費量に見合わないにゃ』

「まず、食べようとする前提で考えるのはやめてくれないかな!」


 ミーシャの分析に、リルとエンドが『いい運動にはなりそうだけどねー』『え、そんな凄い魔物なんだ? ちっこいのに……』と返しているのを聞きながら、肩を落とす。

 なんでこうもエサ扱いするのかなー。


『いろんな耳の子がいるね』

『尻尾もついてるよー』

『リルに似た耳と尻尾の子がいるにゃ』

『ミーシャ似もいるよー』

『ボクに似た子はいないの?』


 エンドたちがモフタマを観察している。


 狼っぽい耳と尻尾がついたモフタマが、リルの鼻先に飛び乗って、誇らしげに体を膨らませた。

 似てる似てる。可愛いよ。ミニリルかな?


 猫っぽい耳と尻尾がついたモフタマは、ミーシャに飛び乗ろうとして、猫パンチで跳ね除けられている。


 モフタマは素早さだけならミーシャを上回るから、猫パンチを避けられるはずだけど、叩かれて『あ~れ〜』と楽しそうに飛んでいた。

 なんでだ。叩かれるのが楽しいのか? モフタマの喜びポイントがいまいち理解できん。


 エンドは自分に似たモフタマがいなくて、ちょっとしょんぼりしてる?

 別にリルたちのミニ版を作ろうと思って、モフタマたちを用意したわけじゃないんだけど……仲間外れにされてる気がしちゃったのかな?


「……よし、鳥っぽい子を創ろう!」


 さっき創り過ぎたと反省したばかりじゃないかって?

 バカヤロー。可愛いモフモフ仲間が欲しがってるんだから、俺が創ってやらないわけがないだろ!


「エンドは古竜エンシェントドラゴンだけど、羽とかの見た目は鳥っぽいからなー。モフタマにしたら、可愛い範疇に留まれるはず!」


 タブレットを使ってササッと創る。

 何度も創ってるから、もう慣れたものだ。


 ベースは普通のモフタマと変わらず。耳や尻尾の代わりに、羽をつけてあげる。とはいえ、ヒヨコのように頼りない感じの羽だから、人間の危機感は煽らないだろう。


 完成したモフタマをすぐさま召喚して手のひらに乗せた。


「──待って、これ、すげぇシマエナガ感があるな??」


 雪の妖精を生み出してしまった! 可愛い。

 キョトンと目を丸くしたモフタマ(シマエナガ風)を眺めて、思わず頬を緩ませる。


「みぅ」

「君の名前はエナガにするぞ」

「みぅ!」


 エナガちゃんの体がフワッと輝いた。

 あ、しまった。ダンジョンマスターの俺が名付けしたら、特殊な変化が生まれる可能性があるんだよなぁ。


 光が消えた後、見た目が最初と変わりないのを確認して、恐る恐る情報を確認する。


——————

名前:エナガ

種族名:モフタマ

レベル:1

能力:素早さMAX、防御力MAX、幸運値MAX(NEW)、攻撃反射(NEW)

——————


 ……なんか新たな能力を入手してるぅ!

 でも、危険度が増したわけではないから、問題ない、か……?

 幸運値が高いのはいいことだし、攻撃反射も万が一攻撃された場合に役に立ちそうだ。


『わぁい、ボク似の子だ!』


 エンドが嬉しそうにエナガに顔を寄せる。

 サイズ差がエグいな。大きい方も、小さい方も可愛い。

 

『おっきい……パパ?』

『ぱ、パパ……!』


 エナガの言葉に、エンドが衝撃を受けた様子で固まる。


 パパか……確かに見た目は近いけど、存在が違いすぎないか?

 エンドも生まれてから大して時間が経ってないし、子どもみたいなもんだしなぁ。


 ──なんてことを考えて、俺はのほほんとしていたけど、エンドの思いは違ったらしい。


『……ボクがパパだよ!』

「違うが?」

『パパ! 乗っていい?』

『おいで、可愛い我が子よ!』

「違うが??」


 よくわからない内に、サイズ差が大きすぎる親子が誕生していた。なんで???


 エンドの頭の上に乗って、エナガがはしゃいでいる。


 ……まあ、二体とも楽しそうだし、このままでいっか。

 特殊能力持ちのエナガには、今後モフタマのまとめ役をお願いするかもしれないし、エサ扱いじゃなくて仲間だという意識を高めるためにも、みんなと交流を深めてもらおう。


『エンドの子だったんだねー』

『可愛いよね!』


 すぐにエナガをエンドの子ども認定してるリルの考えがわからない。俺が生み出した魔物だってわかってるはずなのに。

 リル、たぶん何も考えてないだろ。


 ミーシャと顔を見合わせる。遠い目をしてるなぁ。きっと俺も同じ表情だ。


「……新たな親子誕生にカンパーイ」


 ジュースが入ったグラスを掲げたら、ミーシャに『現実逃避はやめろにゃ』と額に肉球を押し当てられた。

 猫パンチじゃないの、ミーシャ優しいなぁ。


 肉球スタンプは正直俺にとってはご褒美だから、精神力が回復した。


 よし、この調子でダンジョン内整備の作業をするぞ!


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