第279話 大団円!

 歩夢がエセキツネに一撃与えた後の出来事は語るほどのものではない。

 エセキツネは何度か能力を使って抵抗しようとしたものの、勇者パワー✕2と魔物パワーに押されてほぼ完敗だった。


 悲鳴語録は増えたぞ。

〈あべし!〉〈ひでぶ!〉〈なはあ!〉〈ぬふく!〉〈のあう!〉〈だらお!〉

 ──などなど。

 なんでそんなに変な悲鳴なのか、首を傾げたいものばかりだったけど。


 もしかして、ウケ狙いだったのか?

 それなら笑ってやれなくて、ちょっとごめんな?


 でも、もっと熟考した方がいいよってアドバイスしとくぞ。笑いをとるって難しいことだからさ。

 これからの人生(神生?)はまだまだ続くんだから、笑いの道を極めることを生きがいにするといいよ。それだと、俺たちの迷惑にならないし。


 ──そんな感じで、ボロボロになって倒れているエセキツネに俺は語りかけていた。


 エセキツネは頷きもしない。力尽きてる感じ。

 代わりに、ようやく檻から出ることができたエセタヌキが、真剣な表情で頷いていた。


 ……エセタヌキとエセキツネでお笑いコンビを組んだらええんちゃう?(テキトー)


 ちなみに歩夢たちは、攻撃の余波でちょっと(?)破壊しちゃった部分の修復に勤しんでる。

 キツネ巫女たちとは完全に和解したようで、一緒に作業していた。

 今後、エセキツネの行動はキツネ巫女たちが監視し制御すると約束してくれたらしい。


 眷属なのにそんなことできるのか、と疑問に思ったけど、そこは雪白が上位神の眷属パワーでどうにかしてくれたようだ。

 仕組みはよくわからないけど、すごーい。


『マスター、がんばった僕たちを褒めてー』


 リルがすり寄ってきた。

 散々リルにやられたエセキツネが、先程までの無反応っぷりを忘れたように、怯えた様子でエセタヌキの後ろに一目散に隠れた。

 エセタヌキが『なんでワシ!?』という感じで嫌がってる。


 大丈夫だよ。もうリルはお前たちに興味ないから。

 ミーシャは相変わらず爛々とした目で凝視してるけどな! ネズミを追う猫の目って、たぶんこんな感じ。


「リルもみんなも、よくやってくれた! ありがとなー」

『えへへー、でしょー?』


 わしゃわしゃとリルを撫でる。

 お互いにとってのご褒美だ。もふもふ最高ー!

 でも、ちょっと毛が乱れちゃってるから、おうちダンジョンに帰ってから整えてあげよう。


 リル以外のみんなも撫でて可愛がり、お礼を伝えてから「さて──」と立ち上がる。


 そんな俺の動作にまで、エセキツネとエセタヌキ──エセエセコンビがビクッと震えていたから、しっかりと自分たちの行いを反省してくれたということだろう。

 俺はそんなに殴ってないんだけどな?


「歩夢ー、タイシー! 俺はもう帰るけど、二人はどうする?」

「んー、俺もそろそろ帰ろうかな。仲間を残してきてるし」

「私も、アカネに挨拶しないと」


 二人も俺と一緒に帰るらしい。

 その様子を見て、キツネ巫女たちがいそいそと何かを持ってくる。


「あの……大したものではありませんが、主様たちの行いのお詫びの一つとして、こちらをお収めくださいまし……」


 三つの風呂敷包みを差し出された。

 まさか昔話的なハズレはないよな? どれも見た目に違いはなさそうだけど。


「わざわざどうも。受け取っておくよ」

「ご丁寧にどうも。私が受け取っても、どうしようもない気がしますけど。すぐに日本に戻りますし」


 歩夢とタイシがあっさりと受け取ったのを見て、俺も残った一つに手を伸ばした。

 残り物には福がある、だといいな!


「雪白も行くぞー」


 キツネ巫女たちと戯れている雪白に声をかけた。

 エセキツネとは違って、キツネ巫女たちへの好感度はそれなりのようだ。


〈はーい! じゃあ、巫女ちゃんたち、またねー。ちゃんとアレたちを監視してね!〉

「お任せください!」


 主に似たのか、雪白にメロメロになっていたキツネ巫女たちが、キリッとした表情で答える。

 ……俺たちにとって困ることじゃないから、スルーしよう。



◇◆◇



 無事ダンジョンに帰還!

 何日も離れていたわけじゃないけど、やっぱホッとするなー。


 タイシはさっさとアカネのところに行ったよ。

 数日一緒に過ごしてから、日本に帰還する予定なんだって。

 ……タイシがいなくなった後の迷宮都市のことをどうするか、ちゃんと考えないとな。


 歩夢は残してきた仲間を回収して、俺のダンジョンについてきた。

 一日ここで過ごしてから、任務の報告のために神殿に行く予定だとか。

 その後は旅に出るらしい。


 偽神の問題をどうにかできたし、キツネ巫女が『勇者を神殿で独占しないよう指示を出しておきます』と請け負ってくれたから、自由に行動できるようになるはずなんだと。

 何か問題が起きても、さっさと日本に帰ればいいということで、心の余裕もできたからな。


 そう考えると、羽紗神様うさかみさまに会って、歩夢たちの帰還が可能になった段階で、抱えていた問題の大半が解決したようなものだったな。

 俺、ぐっじょぶ?


「にーくー、肉肉♪」

『にーくー、肉肉♪』


 打ち上げ用のお肉を焼きながら即興で歌うと、リルが一緒に歌ってくれた。

 お肉は、目的達成を祝って、景気よくドラゴン肉を用意したぞ。


 エセキツネとのバトル後にちょっとボサッとなっていたリルの毛は、しっかり梳かしてあげたから、元通りのもふもふサラサラだ。

 最高に可愛いぞー。やっぱりもふもふとのんびり過ごす時間が一番楽しいし幸せだ。


『ビールいきます?』

「いく」


 操人形マリオネに食い気味で答えて、俺はジョッキを受け取った。

 全員に飲み物が行き渡ったのを見てから、祝勝会の開始を宣言する。


「──邪神と偽神を懲らしめよう計画の成功を祝して……乾杯!」

「「「『乾杯!』」」」


 ジョッキをぶつけ合う。

 みんな晴れやかな表情だった。


 心に引っかかっていたものが取れたし、これからは心置きなくもふもふを愛でてのんびり過ごすぞ。


 目指せ!

 もふもふと過ごす、最高のスローライフ!



******


これにて本編完結になりますー。

この後は、もふもふスローライフな日々や歩夢たちのその後について、不定期更新していく予定です。

お時間がある時にお付き合いいただけましたら嬉しいです。


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【本編完結】ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です ゆるり @yururi-_-

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