第267話 潜入(?)中
必死にブロッコリーを取ろうとしているエセタヌキの姿にちょっぴり和みつつ、モニターの監視に集中した。
現在、歩夢たちが最初に出会ったキツネ巫女さんとお話し中だ。
出会って即戦闘、という雰囲気ではなさそうで、少し安心した。
怪我なく無事に帰れることが、一番大切なことだからな。
[まさか勇者様が正式なルートではないところからやって来るとは思わず、出迎えが遅れました。申し訳ありません]
キツネ巫女さんが頭を下げる。
正式じゃないルートを使って、こっちこそちょっと悪かったかな、と思ってしまうほどシュンとした態度だ。
なんだろう……こういう感じを出されると、怒りが弱まってしまいそうだな。
それがキツネ巫女さん側の狙いなのかもしれないと疑ってしまう。
[いや、そのことは気にしないで。それより、俺たちは偽神──光神に会いたいんだけど]
歩夢が嫌そうな顔で偽神のことを正式名称に言い換えて、面会を求めた。
うんうん、怒りを抑え込み、礼儀正しくできて偉いと思うぞ。配下を送り込んで、いきなり神域を破壊し始めた俺とは大違いだ。
……エセタヌキからなんとも言えない目を向けられてる気がする。
でも、大技ぶっぱも手っ取り早く事が進んで、結果的によかったじゃん?
エセタヌキにとっては最悪だっただろうけど、そこについては
[
キツネ巫女さんが戸惑いもあらわな表情で
勇者が魔物とセットでやって来るなんて、予想できるわけないもんなぁ。一体どういう関係なんだと、不思議に思って当然だ。
『はいは〜い! ボクたちもいっしょにいくよ〜』
『ニセカミにあいたい〜』
『ボクたちのけりわざを、ぜひあじわってほしいな〜』
元気に手を上げて答える
言葉はあんまり伝わってないけど、
『フェリスはタイシの助っ人にゃあ』
『ワンダーは偽神の浄化を試みるワン!』
こっちの言葉は態度で推察することさえ難しいから、キツネ巫女さんが困惑してるけどな。
[……うん、できれば一緒に。仲間(が飼ってるペットみたいな子たち)なんだ]
歩夢が言った〈仲間〉という言葉に、なんか副音声がついていた気がするんだが? 俺のもふもふ愛が呆れられたような?
俺がちょっとした引っ掛かりを感じ、首を傾げて考えている間に、歩夢たちの会話は先に進んでいった。
[そうですか……一応、主様に確認してまいりますので、こちらの部屋でお待ちください]
キツネ巫女さんが歩夢たちを神社のような建物内に通す。
この感じだと、平和な感じで面会はできそうだな。
でも、そうなると、歩夢たちはどうするつもりなんだ? 偽神に一発(概念)を入れることが目的のはずなんだけど。
疑問に思いながら静かに観察していると、歩夢たちは建物内の一室に入ったようだ。
そこは和室で、机の上には和菓子などが置かれている。客を迎えることが前提にされている部屋のようだ。
神域なのに、そんなに客が来るんだろうか?
俺が首を傾げていると、エセタヌキが「たぬぅ!」と鳴くのが聞こえてきた。ちょうど歩夢が煎餅を手に取ったところだ。
『なに? あれはエセタヌキのものなの?』
リルがエセタヌキの雰囲気を読み取って通訳してくれた。
エセタヌキが何度も頷いているから、ほぼ正確な通訳だったようだ。さすがリル。優秀な相棒だな!
「お前のものって、あれはどう見ても客用……って、そういうことか。あの神域での客は、つまりお前ってくらい、エセタヌキしか行ってないわけだな」
呆れつつ訂正していた途中で、真相に気づいて納得した。
直通の道さえ用意していたくらいだから、くだらない喧嘩をしていたわりに、エセタヌキと偽神は普通に交流をしていたんだろう。
エセタヌキのために常時お菓子を用意しておくなんて、偽神側は結構歓迎してる気もする。謎な関係性だ。
[……さて、行こうか]
大人しく応接室に入って寛ぐフリをしていた歩夢が、にこやかな表情で部屋の外に向かった。
キツネ巫女さんが立ち去り、近くから気配がなくなったのを察してすぐのことである。完全にこの状況を狙ってたな。
[監視はついてないみたいですね]
[甘く見られてるよね。俺たちが偽神を恨んで攻めてきたとは、少しも考えないんだろうな]
タイシの報告に、歩夢が肩をすくめた。
邪神もそうだったけど、偽神は人の人生を好き勝手に弄った自覚がないんじゃないかと思える対応だよな。普通、恨まれて当然だと考えて対策しておくものだと思うけど。
これが、歩夢たちを油断させるための罠じゃなければ、偽神たちが馬鹿なんだという話で済むんだけど……実際どうなんだろう?
『ニセカミはずっとおなじへやにいるよ〜』
『こっちこっち〜』
『キツネミコたちにあわないようにあんないするね〜』
こっそりと影に潜って偵察をしてきていた
その後を歩夢たちが追っていく。
言葉がわからなくても、
さて、いよいよ偽神とご対面だな。
歩夢たちがどういう報復をするのか楽しみだ!
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