第251話 いざ出発のとき

 みんなで食べて飲んで色々と話して。

 途中、歩夢とタイシが「「偽神も神殿もクソ」」と共感しあって仲良くなって、偽神打倒計画を練り始めたのは、たぶんいいことだ。

 勇者二人の力を合わせれば、偽神も倒せる気がする。


 その時は俺もできる限り協力しよう。

 まだ、どうやって偽神のところへ行けばいいかわからないから、地道に神殿の影響力を削ぐことしかできないけど。


 今は、みんなで力を合わせて、邪神をギャフンと言わせるぞ!


「ということで、いよいよ出発です」


 俺はみんなを前にして、真面目な顔で宣言する。


 懇談会の翌日、俺たちは準備を整えて、ついに邪神の元に向かうことにしたのだ。

 と言っても、俺はリルたちによって安全確保されてから遅れて出発するとになる。

 リルたちは心配症だからなぁ。しかたない。


「みんな怪我とかしないように、気をつけてな。リルたちが俺を心配するのと同じように、俺もみんなのこと心配してるんだからな」

『うん! マスターが来る前に、抵抗できないくらいに邪神をボロボロにしておくね!』


 俺の目の前に座っているリルは、一切気負いした様子がない。いつも通りほのぼとした雰囲気で、容赦ない発言をする。

 そっか、ボロボロか……なんか別の心配が出てくるなぁ。


「……俺が殺れるように、ちょっとは残しておいてくれよ?」

『もちろんだよー。でも、やり過ぎちゃった時は、勇者に治癒魔法をかけてもらおうね』

「……そうだな」


 一応やり過ぎ注意をしておいたけど、絶対リルは手加減する気がないな。

 俺がぶん殴れるところが残っていることを祈ろう。リルが言う通り、最終手段は歩夢による治癒である。邪神に効くかは知らん。


 とりあえず、最高にもふもふなリルをワシャワシャと撫でておいた。

 嬉しそうに目を細めるリルが可愛い。癒やされる。


 ちなみに、邪神のところに乗り込む魔物は、リルとエンド、影兎シャドウラビ、フェリス、ワンダーである。


 リルとエンドは強さが桁違いだから参加するのは当然だ。

 特にエンドはDP産じゃないから、邪神の影響力が最も薄く、いざという場面──邪神の能力による妨害──で頼りになりそうだし。


 影兎シャドウラビたちは、本人たちの立候補によってメンバー入りした。

 たぶん単純に戦いたかっただけだろう。活躍する場面が多くないからな。暇つぶしな気配がする。


 ……ちっこくて可愛い影兎シャドウラビに、暇つぶしで殺られる邪神──想像したら、なんかおもろいな。影兎シャドウラビ、容赦なくやっちゃえ!


 フェリスとワンダーは、魔力や穢れでの攻撃があった場合に対処できるよう、行ってもらうことにした。

 たいていのことはリルたちの能力でどうにかなるだろうけど、安全のための手は打っておくに越したことはない。


「エンドも怪我しないように気をつけてな。なんか異常があったら、みんなを連れて帰ってきてくれ」


 日向の猫のように目を細めて寛いでいるエンドの首筋に手を伸ばして撫でる。

 チラリと俺を見たエンドが、しっかりと頷いた。


『わかってるよー。邪神が卑怯なことをしてみんなに危険が迫ったら、一発入れてから、みんなを連れてすぐに退散するー』

「……一発は入れるのか」

『逃げる時間を確保するためにも、一発は入れるよ』


 二度宣言された。エンドの決意は固そう。

 まあ、エンドが言っていることは間違ってないし、現場での咄嗟の判断は任せる。


 一番邪神の影響力が少ないエンドは、万が一の場合にみんなを連れて帰ってくるという、重要な役割を任せてる。

 邪神がもしダンジョンの影響下にあるものを意のままにできるような能力があったら危ないからな。


「わかった。エンドの思うようにしてくれたらいい。頼んだぞ」

『はーい、任せてー』


 くわりとあくびをしながら答えるエンドは緊張感がなく、俺もつい気が抜ける。

 なんというか……リルとエンドは強者の余裕があるよな。俺も見習いたい。


 そんなことを思いながら、リルたちの足元を駆けて遊んでいる影兎シャドウラビを見下ろす。


影兎シャドウラビたちも楽しんでこいよー」

『は〜い。じゃしんって、いじりがいがあるかな〜』

『インクよりおもしろいリアクションをしてくれたらいいね〜』

『いいリアクションをするまで、ボコボコにすればいいんだよ〜』


 ワクワクした様子ではしゃいでる影兎シャドウラビたちは可愛いけど、発言は物騒だ。


 邪神にリアクション芸を求めるな。たぶんその期待には応えてくれないと思うぞ。

 ……いや、意外といいリアクションをしてくれる可能性もあるか?

 それはそれで面白いから、影兎シャドウラビたち、がんばれー。


 一体ずつ声をかけながら、頭を撫でてやる。

 フワフワの毛は、相変わらず触り心地が最高で癒やしだ。

 影兎シャドウラビたちも嬉しそうだし、これがまさにWin-Winというやつである。


 満足するまで撫でてから、影兎シャドウラビたちの傍に控えているフェリスとワンダーに視線を移した。


「フェリスとワンダーは、リルたちのサポートを頼んだぞ」

『任せてみゃあ。空間全部の魔力を吸い取ってやるみゃあ!』

『邪神って穢れてそうだから、存在ごと浄化するワン!』


 やる気いっぱいでよろしい。

 ワンダーが言ってることは、なかなかひどいけど。


 そっか、邪神は存在自体が穢れてると思われてるのか。

 その場合、邪神が浄化されたら何になるんだろう。めっちゃ清浄なジジイ? 想像したら気持ち悪くて寒気がするんだが?


 なんとも言えない気分になったのを紛らわすために、フェリスとワンダーを撫でる。

 もふもふモチモチで触り心地が素晴らしい。


「俺たちはリルたちのサポートをすればいいんだよね? 攻撃もするけど」


 歩夢が問いかけてきたから、「ああ」と頷いて返す。


「もしリルたちがやり過ぎちゃってたら、俺が一発入れるために、治癒を頼むかも」

「ははっ、了解。流星が被害者なんだから、その分はやり返したいよね。その気持ちは俺も凄くわかるから、ちゃんと気が済むまで治癒してあげるよ」


 にこやかに俺の依頼を受け入れてくれる歩夢が、実は俺の扱いに心から怒って、邪神にやり返してくれようとしていることを知っている。

 さすが親友。ありがとな。偽神の対処は俺もがんばるぞ!


「私の能力は魔力豊富な場所でしかほとんど使えませんけど、邪神のところなら問題ないでしょうし、サポートをがんばりますよ」


 タイシがニコリと笑う。

 小声で「アカネへの仕打ちは許しません。殺してやりますよ、邪神め……!」と呟いているのは、スルーしていいものか。


 悩ましいけど、俺に害はなさそうだから、まあいっか! いざとなれば、歩夢がどうにかしてくれるし。


「それじゃあ、みんな頼んだぞ! 怪我しないようにな!」


 みんなを見送る。

 俺は護衛役のミーシャとインク、サク、影兎シャドウラビたちと、フェリスの視界を映したモニターを眺めながら出番まで待機だ。

 邪神のボロボロになる姿を早く見たい。待ってろよ、邪神め!


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