第249話 偵察するぞー
集めた玉を全部一つのところに設置した。
それを見たリルが『うん、バッチリ道ができて安定してるね!』と太鼓判を押してくれたから安心だ。
俺もダンジョン内転移の能力を使って、玉のところに向かう。
元地獄の穴であり、まだ内部に敵性の魔物が何体かいるため、護衛役から離れないという条件の下、俺自身が行く許可が出たんだ。
条件付き許可を出したのも、護衛役を担うのも、ミーシャである。まあ、現地にはリルもいるけど。
ミーシャの許可が必要という段階で、ちょっぴりマスターとしての威厳が疑わしくなったけど……まあ、いつものことだからいいか。
到着した元地獄の穴内部は、不思議な灰色物質に囲まれた空間のままだ。
どうやら魔力を蓄える性質がある物質のようだが、ダンジョンの環境変更機能を使ったら、この物質すべてが無駄になるらしい。
それなら残しておいた方が、何かに使えるかもしれないだろ。
「ほー……変な感触だな」
足踏みしてムニュとした弾力を感じ、眉を寄せる。餅の上に乗ってるみたいな感覚だ。
『そうだねー。でも、すぐに慣れるよ』
『足に絡んでこないなら問題ないにゃ』
リルとミーシャがうんうんと頷き合う。
二体にとって、戦闘に支障が出るか否かが一番重要な点らしい。さすが魔物。
苦笑しながら、持ってきた邪神探索レーダーを玉の近くに置く。
道はできているものの、そこを進むための案内となる邪神探索レーダーは、まだ試運転すらしてない。
ということで、起動してみるぞー。
『これがレーダーなんだねー』
『見た目は安っぽくて、すぐ壊れそうだにゃ』
『叩いてみる?』
「リルの一撃を食らったら、大抵のものが木っ端微塵になるからやめてくれ!」
邪神探索レーダーを覗き込むリルとミーシャが、興味本位で攻撃しようとするのを、慌てて止めた。
せっかく魔力を貯めたのに、壊れたら無駄になるだろ!
『これが動き始めたら、どれくらい保つにゃ?』
「三日はいける」
俺の返答に、ミーシャが『にゃふ~』と頷いた。リルは『三日もあれば、邪神をボロボロにできるね!』とやる気いっぱいである。
まさか、三日間ずっと邪神を攻撃するつもりじゃないよな? さすがの邪神でも、それをしたら死ぬのでは?
ちょっと顔が引き攣るのを感じながらも、邪神に配慮する必要はないかと、制止はしないでおいた。
出発までもうちょっと時間がかかるし、三日間フルで攻撃することはないしな。
「それじゃあ、動かしてみるぞー」
邪神探索レーダーの起動スイッチを押す。ポチッとな。
すると、光が四つの玉に向かってのび、ブワッとさらに強さを増した。
光の中に梯子のような道が現れる。これを辿れば、邪神の元に着くはずだ。
「──見た感じ、成功してるよな?」
『たぶんね。僕が行って確かめてみようか?』
「いや、それはちょっと、万が一の場合が怖いな……」
この場合の怖いは、リルが邪神を不意打ちで強襲して、一人でぶちのめし、俺たちが一発入れる余地が残らない恐れのことである。
普通にやりそう。
もちろん、途中で迷子になったら、というのも怖いけど。
残念そうなリルを宥めつつ、タブレット端末から偵察アイテム【トリクン】を召喚する。
これは鳥型のドローンのようなアイテムだ。遠隔操作で映像と音声を届けてくれる。
「トリクン、行ってこーい」
ビューンと飛んでいったトリクンが、光の中の梯子を辿って進む。
届く映像を見ていると、光が眩しすぎて目が痛くなりそうだ。
ここを進む時は、サングラスとかの光を防ぐアイテムが必須だな。
『単調で面白くないにゃ』
『飽きるねー』
ミーシャとリルがそんな感想を零した頃、映像に変化が現れた。
白い空間にちゃぶ台、ブラウン管テレビ、レトロな花柄のポッドなど……昭和の居間みたいな部屋が見える。
なんだこれ?
めっちゃ生活感溢れる部屋だけど、邪神ってここに住んでんの? めっちゃプライベート空間だな……。
俺がポカンとしていると、映像に見覚えのあるジジイの姿が映った。口を開けて間抜けな顔になってる。
[……ハッ!? なんじゃこれは!?]
「あ、やべ、邪神に見つかった」
このタイミングで邪神に殴り込み計画がバレるのはよくないだろ。計画に支障が出そうだし。
今のところ、ダンジョンの魔物たち&勇者二人という、過剰戦力の予感がするけど。
「──こんなこともあろうかと、証拠隠滅の準備はできてるぞー。トリクン、自爆しろ」
ジジイの驚き顔を見ながら、トリクンに指示を出す。
途端に、映像が爆炎と共に大きくブレて途切れた。無事、証拠隠滅できたな!
爆発でジジイがどうなったか気になるけど、まあ大した問題はないだろ。
だって、自称神のジジイだし。これくらいのことで怪我を負うなんて、そんな弱っちくないって。
……部屋はダメになってるかもしれないけど、邪神の力があれば、再生は余裕だろう。
「無事に道が繋がってることが確認できたな! 邪神探索レーダーは随時邪神を追うから、逃がすこともないし……あとは攻撃するだけだ。みんな、がんばろうなー」
リルとミーシャに微笑みかける。
ブンブンと尻尾を振って『うん! ぎゃふんと言わせるよー』とやる気いっぱいなリルはともかく、ミーシャがドン引きした顔になってるのはなんでだ。
『マスターもミーシャたちのことが言えないくらい過激だにゃ……』
そうか?
俺の怒りを考えたら、まだまだ甘い対応だと思うんだけど。
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