第246話 キレイにしましょう
さて、どうするか──なんて、さほど悩むことでもない。
俺たちにとって、穢れを浄化することは難しくないのだから、さっさとやってやればいいのだ。
大した手間がかからず、勇者に恩を売れるチャンスである。
それに、タイシたちも俺たちの計画に協力してくれるかもしれないし。
タイシ自身は邪神に対して恨みがなくとも、親しい魔物が穢れに苦しめられることになった原因が邪神にあるとわかれば、きっと仕返しを望むことだろう。
「ワンダーに魔物の浄化をさせよう」
俺が方針を決めると、
『あなたの願いを叶えましょう。ちょうどいいことに、俺たちの仲間には浄化が得意なタイプがいますからね』
「ありがとうございます! では、こちらにどうぞ」
タイシが右側を指し示すと、闇から生まれるように、灰色の門が現れた。リルでも問題なく通れそうなほど大きい。
『なぁに、これ?』
リルが首を傾げると、その声が聞こえたかのように、タイシが説明を始める。
「これは転移門です。ダンジョンとして整備している部分より奥にある対の門に、一瞬で転移できます。そこに、浄化してもらいたい魔物がいるんです」
ダンジョンゲートに似たものらしい。
こんな能力を使えるなんて、やっぱり勇者って凄い。たぶん
「危険はなさそうか?」
『んー、見た感じは問題なさそう。魔力にも不審なところはないし。でも、この先がどうなってるかはわからないなー』
リルが鼻をクンクンさせながら、転移門を観察して報告してくれた。危機察知能力が高いリルがこう言うなら、信用していい気がする。
『まずはボクがいくね〜。これのさきも、カゲのはんいみたいだから』
影を操るという能力は、タイシと
それなら、この場は
「ん。
『は〜い、まかされたよ〜』
まったく気負いしていない、いつも通りの様子で転移門に進もうとする
「あの……一応、俺が先に使って、安全を示そうと思ったんですけど」
『それをしても、安全を示すことにはならないでしょ。その体で負傷しても、実際はあなた自身に害はほとんどないんでしょうし?』
タイシの発言を、
それに対し、タイシは反論してこなかった。つまり、
やっぱりかー。
日本での姿をトレースして使ってるって言ってたけど、それって俺が使う
完全にこの世界での体を捨て去ったわけじゃなくて、普段活動する際の体を能力で作ってるってだけ。つまり、アバターである。
『安全の検証は俺たちでします。あなたが先に行っておきたいなら、ご自由にどうぞ』
転移門を使う必要性すらなく、移動するすべを持っていたらしい。
最初の助命嘆願から、タイシの演技だったんだろうなぁ。
『じゃあ、ボクもいくね〜』
その姿が闇に呑まれて見えなくなったのを確認して、俺はすぐに
そこは、木漏れ日の差す草原だった。
木と家から離れたところには低い柵で囲まれた広い空間があり、その中央で黒いモヤに覆われた大きな狐らしき姿の魔物がうずくまっていた。
この狐が、タイシが浄化してほしいと望んだ魔物だろう。
柵の傍にタイシが立っている。
『キケンなしだよ〜』
「そうみたいだな。──
続いて、
『わあ、明るい草原だねー。でも、穢れの気配が禍々しいなぁ』
リルがキョロキョロと周囲を見回して呟く。リルの目にも、差し迫った危険は見当たらなかったようだ。
『あ、タイシが呼んでますね。ワンダー、行ってきてください』
すぐに気づいたタイシが、[こちらにきてくださーい!]と手を振っていた。
『はーい、行ってくるワン!』
『僕が護衛するよ』
ワンダーが駆けていく後ろを、リルがのんびりと追った。
リルに任せておけば問題ないだろう。
念の為、一体の
俺はモニター映像をリルの視界に切り替えた。
すると、魔物の姿がはっきりと見えるようになった。
カナたちのような泥の塊みたいな姿にはなっておらず、黒いモヤを通して狐っぽい姿がちゃんと見えている。
このくらいの穢れ度なら、自我を失わずにいられるのだろう。
近づいてきたワンダーたちを見たタイシは、嬉しそうに顔を綻ばせていた。
[来てくださってありがとうございます!]
『気にしないでいいワン!』
『マスターが決めたことだからねー』
ワンダーとリルがそう言うも、タイシに伝わることはない。ちょっと困った顔をしている。
おい、
だが、俺が
言葉がわからなくても、話を進めることはできる。
[早速ですが、浄化をお願いできますか?]
魔物を指してそう言ったタイシに対し、ワンダーが即座に応じる。
『はーい! やってあげるワン!』
発動した浄化の能力が、魔物を温かな光で照らし──
しばらく経つと、真っ白な大狐が赤い目をパチパチと瞬かせていた。
最高にもふもふしてる。
ちょっとリルと似てるなぁ。可愛い。
タイシはその子を見て満面の笑みを浮かべ、すごく嬉しそうだ。
その気持ち、俺もよくわかるぞ。大きなもふもふは最高に可愛いよな!
……もしかして、タイシも俺と同じくもふもふ好きなタイプか? 同志?
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