ダンジョンは止まらない
第96話 意外な依頼
ダンジョン内の
そのアイテムを使うと、不可視の攻撃――
それを防げる可能性があるならば、と冒険者たちがアイテム入手のために奮起するのは当然だろう。
なんせ、冒険者たちの要望を受けて、
魔物と戦わずに安全に採取して回れたら、相当な利益になる。
ただ、アンデッドを倒すには専用の武器――聖別された武器と言われるらしい――が必要であり、また、低品質なものだとアンデッドを倒すのが大変らしく、なかなか祈りの間には辿り着いていないようだ。
[聖別された武器、宝箱から出ねぇかなぁ……]
遺跡を目前にしてUターンしていく冒険者をモニターで眺め、俺は「ほーん」と声を漏らした。
攻略を進めさせないために、アンデッドを倒せる武器は宝箱アイテムから排除した。
だから、現時点で遺跡を攻略している冒険者たちはダンジョン外でアンデッド用の武器を準備してきている。なかなか希少性が高い武器なので、金銭的な余裕がある冒険者しか購入できないようだけど。
「アンデッド用の武器なぁ……どうするか……」
『それを簡単に冒険者にあげちゃったら、
軽食とコーヒーを運んできたサクが、俺の呟きを聞いてそう言った。
「うん、それが問題なんだよ」
『人を甘やかす必要なくないです?』
インクが俺に用意されたポテトチップスに手を伸ばしながら首を傾げる。
なんで当たり前みたいに取ろうとしてるんだろうな? インクを甘やかす必要もない気がするぞ。
「……攻略が難しすぎるって、冒険者がいなくなるのは困るぞ」
返事をして、俺がインクの手を叩こうとしたら、それより先に影から現れた
『ぐはっ!?』
『ゆだんたいてき〜』
『ね〜、いまかくれんぼちゅうだよ〜』
影からわさっと
かくれんぼって、こんなにバイオレンスな遊びだったんだな……。
「それ、圧死しないか?」
『
「サクがそう言うなら大丈夫なんだろうな」
安心。というわけで、放っておこう。
微かに『助けてくださいーっ』と声が聞こえるのは、きっと気のせいだ。
コーヒーを飲みながら、タブレットで宝箱アイテムを確認する。
アンデッド用の武器はそれなりにDP消費量が多い。宝箱アイテムとして入れるとしても、あまり数は出せないだろう。それくらいが、攻略を進めさせないためにもちょうどいいかもしれない。
「――結局、死に戻りした時に奪取するかもしれないし」
うん、一日一個以下の確率で宝箱から出るように設定しておこう。
その他にもダンジョン内の設定について細かな調整をしていると、不意にコネクトを通して
『マスター、今大丈夫です?』
「おう、問題ないぞ。なんかあったか?」
『遺跡でのアイテム入手の指名依頼が来てまして、これ、受けてもいいんですか?』
「は? お前に指名依頼……?」
ぽかんと口が開いてしまった。なんで
指名依頼というのは、冒険者ギルド側が依頼遂行確率が高い冒険者を指名して依頼を出すことである。依頼者側が受注する冒険者を指名することもある。たいていは高ランク、つまり実力のある冒険者が選ばれる。
だが、
『どうやら、俺は
「ラッキーボーイ……笑っていいところか?」
困惑しているのが伝わってくる
うん、そうだな。
この事実だけを見ると、
それにしてもラッキーボーイって……ネーミングセンス消滅中か?
『笑わないでください。俺は受け入れてないんで!』
「気にするなよ、ラッキーボーイ。理由はともかく、指名依頼をされるのはすごいことだぞ、ラッキーボーイ」
『ここぞとばかりに言わないでくださいよー!』
抗議してくる
まさかラッキーというだけの意味不明な理由で、遺跡攻略の依頼なんてされないだろう。
「報告続けて」
『……冒険者ギルドで、アンデッドとの戦いが得意な冒険者を集めて遺跡を攻略させ、加護アイテムを入手して販売する計画を立てているらしいです。俺はその一団に加入するよう頼まれたってことですよ』
「あー、なるほど? でも、お前が頼まれた理由がいまいちわからないな……」
『俺は密林フィールドで不可視攻撃の可能性を下げられたらいいなぁ、というお守り代わりです』
「なんか納得した」
お守り、ね。実力がある冒険者でも、不可視攻撃は避けられないというのが常識化しているらしいので、
つまりは、困ったときの神頼み的な。
まぁ、そうなったとして大して困ることはないし、優秀な冒険者たちの実力を把握するいい機会にもなりそうだな。
「――オッケー。受けてみてくれ。そんで、一緒に攻略する冒険者の情報を集めろ」
『了解です』
さて、どんな冒険者たちが来るのかな?
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