第21話 美味しい物の価値
それを待っていたかのように、
『どうもー、置いてきぼりの哀れな
「あ、悪かったな……?」
これは怒られてる? というか拗ねられてる?
情報収集中の
人間そのものな姿の
「コネクトで後から回収するって連絡したよな?」
『それでも、置いてきぼりはなしでしょー』
「そうか? うん、悪かった」
改めて謝り、とりあえずコーヒーでも飲むか、と誘ってみた。
『飲み物ならビアーがいいです』
「ビアー? なんだそれ」
『酒場で飲んだら美味しかったんですよ。黄金色で泡があって、喉越しがいいんです!』
「それ、ビールか!」
え、異世界の酒を飲んできたって、羨ましいんだが?
夜から情報収集を頼んだから、人と話せるところが限られるのはわかってたけど……マジで酒飲んできたのかぁ。
「——俺も飲む!」
『お、いいですね。肴はなんにします?』
「お前、短時間で凄く人間の文化に馴染んでないか?」
『それが
人間に擬態できる能力持ちだからこそ、ってことか。
納得して、タブレットを操作し、ビールと枝豆を出す。ビールといえば、これだよな!
素晴らしい割合の白い泡と黄金色の飲み物がジョッキに入って現れる。気分は日本の居酒屋だ。
「プハーッ。最っ高!」
『っ、酒場で飲んだものより美味しいです!』
「そうなんだ?」
『こんなに冷えてなかったですし。味もぼやけた感じで、ここまで爽やかな苦味は感じませんでした。これはうまい!』
似た飲み物であることは間違いなさそうだけど、随分と差があるんだな。
枝豆をさやごとくわえ、豆を押し出して食べる。良い塩加減。この後にビールを飲めば——
「うまい……」
『くはーっ! なんです、この豆! ほのかな塩加減なのに、どうしてこんなにうまいんです? 人間たちと食べたものと違いすぎるでしょう!』
「んー……食べものって、土地ごとに味わいが違うもんだからなー」
この世界はあんまり食文化が発展してないか、もしくはそもそも味覚が違ってるんだと思う。
たんに食文化が違うだけで味覚が俺と同じなら、宝箱に料理を入れても良いかもしれない。
美味しい料理が人間たちの間で評判になって、
「これも食うか?」
大きなウインナーにケチャップとマスタードを添えて出す。
ウインナーはハーブが練り込んであって、食べると爽やかな風味と共に肉々しい旨みが口いっぱいに広がる。ビールに合う!
「うっまー」
『これが天国の味……!』
「罪な天国だなぁ。うん、ケチャップとマスタードで味変するのも最高」
ゴクゴクッ、とビールを喉に流し込む。あっという間に飲みきってしまった。
『……もう一杯ください!』
「偵察の報告が先だな」
『クッ、ビールを
「そこまで言うことか?」
そんなつもりはなかったんだけど。というか、情報収集の結果を報告するのは当然のことでは?
ジトッと見たら、
『マーレ周辺の魔物が弱いため、商人たちの護衛任務でついてきた冒険者の暇つぶしにもならないと、不満があるようですよ。近くにダンジョンがあれば積極的にやって来ると思います』
「それはありがたいな。けど、奥まで攻略しようとがんばられるのは困るぞ?」
眉を顰めながら、
『その可能性はほとんどないかと。たいていの冒険者たちは帰る馬車の護衛任務もあるので、危険は冒さないと思います。それに定期的に良いアイテムが手に入る可能性が消えるのを、商人たちは歓迎しないでしょう』
つまり、冒険者たちはマーレの行き帰りの護衛任務を受けてるから、それをこなせなくなるような暇つぶしはしないということか。
マーレの商人も、ダンジョンの有用性がわかればそれを利用しようとするくらいには、ダンジョンに敵意はない、と。
「死ぬほどのダメージを受けたら入り口に戻す設定にしてるけど、それでも奥まで来ないか?」
『おそらく。来たとしても、ダンジョンマスターを倒そうとはしないでしょう。冒険者たちも商人から怒られたくないですし』
「商人を味方につけるのが良いってことか」
考えながら、一・二階層に設置した宝箱の中身を思い返す。
……うん、武器や回復薬の類より、高価なものとか利用価値があるものを入れた方が良さそうだ。反応を見たいから、ランダムで料理が出てくる宝箱も置こう。
「——よし。
『おまかせください。ご褒美はビールと美味しい肴でいいですよ』
「すげぇ飲ん兵衛じゃん……」
ニコニコと笑う
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