第8話 ダンジョン基礎作り

 お腹いっぱいになったところで、作業を再開することにした。

 リルとのスローライフのために、俺ができることをしていかなくては。


「リルもダンジョンを作りたいんだよな? 三・四階層には手を付けてないから、そこを使っていいぞ。DPはとりあえず百万預ける」

『わかったー。楽しいところにするね!』

「楽しいダンジョン??」


 ルンルンと楽しそうなリルが何を作ろうとしているのはわからないけど、好きにしたらいい。

 でも、一応最低限のことを注意しておく。


「——ダンジョン挑戦者が最奥まで辿り着かないようにするのが目的だからな? 軽々突破できちゃうのは困るぞ?」

『うん! 誰も通り抜けられないのにするね』

「……任せた」


 どんなダンジョンになるんだろう。楽しみだな。


 この場で作業を始めると言うリルは、完成まで俺に見られたくないそうなので、俺は自分の部屋に戻る。


 三・四階層のモニターを切って、一・二階層の改装再開だ。


「DPの余裕はあるし、広げるか」


 迷路は広いほど複雑になり、突破するのに時間がかかるのが一般的だ。それに、広いと仕込めるトラップと魔物の数も増える。


 ということで、まずは二つの階層を今までの十倍の広さに変えた。ちょっと広すぎるか? まぁ、広くて俺が困ることはないからいっか。


 仕込むトラップはオーソドックスな落とし穴や魔物部屋に閉じ込めるタイプの他にもいろいろと用意する。


 俺のダンジョンで怪我をしても、命を落とすことなくダンジョンの外に放り出すように設定してあるから、遠慮なく攻撃できる。


「スライムトラップも一般的か? 引っかかるヤツはいない気がするけど、せっかくスライムがいるし用意しとくか」


 挑戦者の上からスライムが落ちてきて、気道を塞ぐスライムトラップ。

 スライムは物理攻撃が効きにくいし、引っかかったら対処が難しいだろう。仲間ごと魔法で攻撃できるヤツはあまりいないと思いたい。


 他にもいろいろとトラップを仕掛けた後は、魔物の選定に移る。


 最初の階層はあまり強い魔物を置かない予定だ。難度の高いダンジョンだと判断されて挑戦者がいなくなるのは困るし、危険視されて勇者が来るなんて事態も避けたい。


「——なら、オーソドックスな魔物がいいな。消費も激しくなるだろうし、魔物召喚陣をいくつか設置しとこう。三日も経てば、それなりに増えるだろ」


 設置する魔物召喚陣は四種類にした。


〈ゴブリン〉

 小さい人に似た悪鬼タイプの魔物。繁殖力の高さが特徴で、一定の数が集まると、上位種が生まれて群れを率いる。


〈コボルト〉

 犬のような顔をした人型の魔物。繁殖力の高さが特徴で、一定の数が集まると、上位種が生まれて群れを率いる。


〈バット〉

 コウモリのような姿をした魔物。暗闇に潜み、敵に静かに迫り攻撃する暗殺が得意。一定の数が集まると、上位種が生まれて群れを率いる。


〈オーク〉

 豚のような顔をした人型の魔物。繁殖力の高さが特徴で、一定の数が集まると、上位種が生まれて群れを率いる。


 この四種類を一・二階層の東西南北に分けて分布させる。スライムは全域分布だ。


「上手くいけば上位種が生まれるかもなー」


 これを狙って、この四種類を選んだ。あわよくば、って感じだけど。

 挑戦者が訪れやすい一階層目は、魔物がよく倒されるだろうし難しい気がする。


「オークは倒せば〈オーク肉〉をドロップするし、食料目当てで来るヤツもいるだろうな。というか、いてほしい」


 ダンジョンは、ただ存在するというだけでひっきりなしに挑戦者が来るわけじゃない。魅力がないと閑古鳥が鳴く。

 すると、DPが足りなくなって、ダンジョン内でのスローライフなんて夢は泡となって消えるだろう。


「——いや、リルが魔物を連れてきてくれたら、DPの枯渇はありえない……?」


 ダンジョン運営の必要性が問われた気がする。


「あ、ダメだ。ダンジョンの出入り口は公開後には固定されちゃうし、リルに狩りを続けさせたら、さすがにいつか魔物資源が枯渇するだろうな」


 さらっと魔物を資源扱いしてしまったけど、土龍アースドラゴンのことを考えたらしかたないだろう。肉まで美味しいDP源でした。


「ダンジョン出入り口がいくつも設置できたらいいんだけどなー……」


 一通りの改装が終わって、ソファに寝転びながら呟く。


 リルもいろんな場所に散歩に行けたら楽しいだろう。

 俺は外に出られないけど、【視界共有】っていう、魔物と視界を共有するダンジョンマスター能力があるから、一緒に楽しんでる気分にはなれるはず。


 ぼんやりと部屋を眺めていたら、ローテーブルの上にビー玉のようなものがたくさん入った瓶があるのに気づいた。さっきまではなかったはず。

 その横には手紙らしきものもある。


「……ん? もしかして、ジジィからの詫びの品か?」


 神と名乗ったジジィを脳裏に思い浮かべ、眉を顰めながら手紙を手に取った。


〈拝啓 後任のダンジョンマスターへ〉


 そんな一文を見て、思わず目を見張る。


「まさか、これ、ここの前任者……?」


 頭の中の情報を探る。

 その結果、ダンジョンマスターが役目を放棄すると、ダンジョンが初期状態にリセットされて、新たなダンジョンマスターが着任するまで休眠状態になることがあるとわかった。


 こういう風に手紙やアイテムを残せるとは知らなかったけど。


「前任者は俺に何を残したんだ?」


 チラッと瓶を見てから、手紙に向き直る。

 前任者の置土産。それがこれからの俺にどう関わるのか、少しワクワクした。

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