第4話 つかの間の休息?
見た目の確認はできたし、ついでにダンジョンマスターとしての能力も確認しておくことにする。
ソファに腰を下ろし、タブレット端末の画面端にある、人のシルエットのアイコンをタッチした。
パッと切り替わった画面に、俺の現在のステータスが表示される。
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名前:リュウセイ
種族:ダンジョンマスター(初級)
レベル:1
能力:ダンジョンクリエイト、環境構築、ダンジョン操作、通訳、鑑定、視界共有
装備:ダンジョンマスター初級者のローブ
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めっちゃシンプル! そして、確認する前からわかってたけど、戦闘能力が超低い!
詳細な能力値もあるけど、攻撃力などが軒並み一桁だ。リルと比べたら塵のようなものである。レベル1だからか?
……悲しくなんかないぞ。元日本人に戦闘能力なんて期待できないって初めから思ってたから。痩せ我慢じゃない!
「一応、ダンジョンマスターもDPで強化できるのかぁ」
攻撃力などの基礎ステータスを高めたり、新たな能力を覚えたり——全てDPで可能というのは、ある意味楽でありがたいことなのかも。
ただし、そうやって簡単に得た能力を、俺が使いこなせるかどうかというのは、別問題だ。
戦闘なんてゲームでしかやったことのない人が、能力があったとしても生き物と戦えるだろうか。俺は全く自信がない。
「狩猟さえしたことない者に無茶ぶりも甚だしい……」
覚えられる能力に〈魔法〉があるから、正直惹かれるけど。DPの余裕がない中で、そんな趣味には走れないよなぁ。
「戦闘はリルたちに任せる! 俺は良いダンジョンを作ってリルたちを支える! それが一番良いだろ」
自分を納得させるために声に出す。
DPの無駄遣いは厳禁です!
「まぁ、DPの余裕ができたら? 遊んでみてもいいよな?」
誰に許可を得る必要もないのに、言い訳をするように呟いてしまった。
DPの余裕ができたとして、俺の強化で優先されるのは、防御力を上げて身を守る術を習得することだろう。派手な攻撃魔法はその後だ。
一通り習得可能な能力を眺めてから、何も選ばず画面を閉じる。
「はぁー、早くのんびり落ち着ける空間にしてーなー」
視界に黒いフードが映る。
ダンジョンマスターになってからずっと気になってたけど、これ、ダンジョンマスター初級者のローブっていうんだな。
ダンジョンマスターは、ダンジョンのレベルが上がると階級が上がるらしい。それに伴って、装備のランクも上がるようだ。
初級者のローブの効果は〈自身のダンジョン内のどんな環境でも快適に過ごせる〉だった。つまり、溶岩フィールドなどでも影響を受けずに過ごせるってこと。
わりとチートな性能だな。自分のダンジョンでしか効果ないけど、俺は元々外に出られないんだから十分だ。
そして、このフードをかぶっていると安心感がある理由もわかった。
フードまでかぶって初めて、この装備は十全の効果を発揮できる。つまり、これを脱いでしまうと、自分のダンジョンでさえも、俺にとっては危険になりうるんだ。
「この部屋ん中だったら脱いでもいいけど、他ではダメだな」
しばらくは黒いてるてる坊主みたいな格好が、俺の普段着になりそうだ。
その後、ソファに寝そべり、作業を続けようとして、ふと空腹に気づいた。
人間の時と同様に、この体もお腹が空くんだよな。
食は生きる上で必須の行為であり、楽しみにもなり得るから、食欲があるのは嬉しい。
「……最初の飯は牛丼にするか」
牛丼を食べに行く途中で事故に遭ったことを思い出して、すぐさまメニューを決めた。もう口が牛丼を食べたくてたまらなくなってる!
料理はDPを完成品に換えることも、食材に換えて自分で作ることもできる。
でも、今は調理道具を揃えてないし、何より楽をしたくて、DPをそのまま牛丼に換えた。
ローテーブルの上に牛丼が現れる。牛丼チェーン店でよく見る感じ。匂いがもう美味そう。
「あ、箸も作らなきゃ」
DPで出した箸を構えて、手を合わせる。
「いただきます!」
俺好みのつゆだく牛丼を箸で口に掻き込む。甘めのつゆがマジで美味い。牛肉は柔らかくてほどよく脂が乗ってる。これ、結構質が良い肉だな?
「……うまぁ」
ほぅ。吐息と共に感想がこぼれた。
温かくて美味しいご飯と寛げる空間に、ほのぼのと心が安らいでいく。
こうして食を楽しめる生活をしていきたい。リルにも美味しいものを食べさせて、食の楽しみを教えよう。魔物も俺と同じご飯を食べられるらしいし。
「——ごちそうさまでした」
食べ終えて、手を合わせる。ダンジョンさん、今後も美味しいご飯をよろしくお願いします。
残ったどんぶりをダンジョンに吸収させてDPに戻す。箸は洗って再利用しよう。その方がDPを節約できる。
キッチンで片づけを済ませて、再びソファに座る。
お腹が満たされたことだし、そろそろ仕事をちゃんとしないと。リルががんばってるんだから、俺もある程度成果を見せたい。
「まずは洞窟迷宮に魔物と宝物を設定するか。あ、あとトラップも置かないとな」
手元にあるタブレット端末を操作する。
このタブレットにはダンジョン内の地図も載ってるから、何をどこに設置するかも簡単に設定できる。大まかな指示でもある程度上手くできるらしい。
「魔物はスライムが一番DPの消費が少ないのか……。あ、魔物召喚陣もあるじゃん。とりあえずこれ置こう」
魔物召喚陣とは、一度DPを払って設置すれば、一定時間ごとに指定された魔物を生み出す魔法陣だ。
設置するために消費するDPは、数体の魔物を直接召喚する時より多くなるものの、長い目で見たらお得。
様々な魔物を生み出す魔物召喚陣があるけど、スライムを生み出すものが一番DP消費が少ない。
というわけで、一階層の奥にスライムの魔物召喚陣を設定した。
モニターの向こうで、魔物召喚陣から水色半透明の魔物がぴょこんと現れる。もふもふじゃないけど、スライムも丸っこくて可愛いかも? 触ったら気持ちよさそうだし。
スライムはきょろきょろと周囲を見渡すような仕草をした後、一階層を進んでいく。
次々に生まれるスライムたちが満遍なく分布するよう指示を出しておいた。一応、四、五体ずつまとまって行動するように設定したけど、スライムってどのくらい戦えるもんなのかな。
「とりあえず様子見しよう」
スライム召喚の後、トラップと宝箱も設置したところでちょっと満足した。結構働いた気がする。
一旦休憩してコーヒーでも飲もうか、と操作を始めようと指を動かし——
——ビーッ、ビーッ、ビーッ!
突然、けたたましい音が鳴り響いて、体がビクッと震える。
「な、なんだ!?」
この音はダンジョンに侵入者があったことを示す警戒音のはず。初期設定でオンになったままだったんだ。
慌ててダンジョンの一階層を映すモニターを見ると、リルの姿があった。
言っていた通り、外部の魔物を連れ帰ってきたから警戒音が鳴ったんだろうけど——
「——なんだ、あの魔物は……?」
リルが引きずっている魔物が何かわからなくて、モニターに顔を近づけて凝視してしまった。
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