特別嫌なことが無いなら

コウノトリ🐣

心の中の割れたコップ

「理想の自分を思い浮かべて見て」


 職業選択でなりたい自分がない私に先生はそう言った。私は真剣に考えたけれど、胸が苦しくなることがないそんな日々を送れる私でいたいって思った。


 私は常に人と自分を比べる。そして、何が足りないのかを考えるんだ。


 ゲーム知識?

 流行りの動画についての知識?

 面白い話?


 周りが話す事柄を盗み聞いて私では話に入れないって確信する。それでも、私はあの輪の中に入りたい。


 理想の自分はあの輪の中に入って笑顔で過ごすことができること。 そんな一日をずっと過ごしたい。


 それはきっと、必要ってされているっていうことだから。私は自分の評価を外の世界に依存している。


 だから、ただあなたと話せた。それだけで、私の心は満たされて恋でもしているようにポカポカする。


 輪の中で話しているあなたにとって、当たり前の日々が私にとっての理想の日々。


 理想っていうのは、その時々で変わるものだけど、そんな日々が当たり前になって更なる理想を得ることができたなら。


 きっと、私は幸せで不幸なんだとそう思える。気づけない不幸。気づけないほど当たり前となったことへの幸せ。


 人間はきっと心に割れたコップを持っている。幸せを感じた時にそのコップへと温かい水が注がれる。


 そして時間が経つと、割れ目からその水は出ていってコップは温かい水を要求する。


 割れたコップにも温かい水が常に満たされているならば、それはとても幸せなことでとても不幸なこと。


 きっと、その時の私は割れたコップに温かい水を注いでくれている存在に気づけないから。


 そして、もう一つの割れたコップを持ってきてもう一方も満たそうとする。それで言うんだ。


「理想の日々はほど遠い」


 これはとても悲しいことだから。そうなったら、一番はじめのコップに注いでもらってもあなたはきっと満たされない。


 理想は理想であることが結局は一番の幸せなんだって、そう思える。割れたコップは際限無く水を要求するから。


 理想の日々が遠いって言っているくらいが丁度いい。

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