学校のアイドルと恋仲になった俺の理性がヤバすぎる!

 今まで付き合っていなかったのが不思議だと、部屋で絡み合っているところを目撃した母さんが言っていた。


「今日はお赤飯かしらね。亜美ちゃんも呼ぼうかしら」


「いいですよ!おばさん」


「あら連れないわね。お義母かあさん、でしょ?」


「揶揄わないでください!」


 真彩はそう言うと、俺の手をテーブルの下で握った。


「逢瀬にウチを使うのはいいけど、ちゃんと避妊はするのよ?」


「母さん!デリカシー!」


「デリカシーだなんて言っていたら、子供に性教育なんてできないわよ」


 元保健医の母の言葉は重かった。

 その魅力で男子生徒を虜にしていたと、同僚だった父から聞いたことがある。


「今はどうか知らないけど、昔は本当に保健室でし始める生徒もいたからねぇ」


「俺らはそんなんじゃないから!」


「え、そうなユウくん?」


 真彩はそう言うとがっしりと俺の腕を掴んだ。

 その痛みに耐えながら、言い訳を考えていると、ニヤニヤと俺を見る母の視線が気持ち悪かった。


「だ、だから、別にする事を目的に付き合うとかじゃないって話だよ」


「そっか……そうよね」


「真彩ちゃんはユウのことが好きなんだね」


「はい。この世の誰よりも。私の推しです!」


 高らかにそう宣言した真彩。

 俺は溜息をついた。


「学校でどうするんだよ。ただでさえ学校のアイドルにくっついてるノミみたいに言われてるのに」


「それは任せて。私も一緒に戦うから」


「戦うって……どうやって?」


 翌日、真彩は俺と腕を組んで登校した。

 もちろん、すぐに親衛隊に絡まれることとなったが、俺達は彼らの前で濃厚なキスをしてみせた。

 いや違う。俺は別にしたいわけではなかったが、真彩が無理矢理そうして来たのだ。


「これでわかったでしょ? 私に付きまとってもいいことはないって」


「お、俺達のまあやたそが……」


「いつからあなた達のものになったのよ。私はずーっとユウくんのものだし」


 火に油を注ぐような発言で、俺は顔色を悪くした。


「それからユウくん」


「な、なんだ?」


「今までごめんね」


 真彩はそう言うと俺を引っ張って昇降口へと向かった。

 別のクラスなのでロッカーの位置は違う。が、真彩は俺を待ち伏せしてすぐにくっついて階段を上がっていく。

 生徒達が振り返りながら俺たちを見遣る。

 その視線が痛い……。


 教室の机を片付けるのを真彩が手伝ってくれた。そして片付いた机に座って宣言する。


「私は昨日からユウくんと付き合い始めたから。もうする事はしてるから今後は邪魔しないでね」


 アイドルからの熱愛宣言に、教室中は凍りついた。


「それからユウくんに関する根の葉もない噂、あれは全部嘘だからね」


「う、噂って何だよ……」


 真彩はそう言い終えると自分の教室に向かった。

 俺はよく分からない視線を受けつつ、授業の準備をした。


「ごめんなさい!」


 昼休みの屋上に呼び出された俺は、目の前の女の子にそう言われていた。


「ああすればユウくんに変な虫がつかないと思って……」


「ああすればって、噂のこと?」


「そう……怒ってるよね?」


「どっちかというと、呆れてる」


 俺は溜息を吐き捨てた。

 これで胸のイライラはどこかに行った。

 頭を下げたままの真彩の体を抱きしめると、彼女は驚いていた。


「そんな事で嫌いになる程安い関係じゃないだろ?」


「そうね……うん。ありがとう」


「許してはいないから、これからいっぱい償ってもらう」


「何でもするから……激しいプレイとか?」


「そうだな、ひとまずNTRとか?」


「それは私が嫌!いくらユウくんのためだからって他の男とは絶対に嫌!」


 真彩がそう言うと、俺も頷いた。


「俺も嫌だ。だから冗談。まずは真面目に恋人としてお付き合いをお願いしたいかな?」


「はい!不束者ですが、よろしくお願いします!」


 校舎の屋上。

 そこは全校生徒に人気の昼飯スポット。

 そんな中でこんなコントみたいな事をしていると、彼女は学校のアイドルを卒業できたようだ。



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