学校のアイドルと幼馴染な俺の居場所がなさすぎる!

一ノ宮美夜

学校のアイドルと幼馴染な俺の居場所がなさすぎる!

 みんなは知っているだろうか?

 幼馴染。それは、幼い頃から馴染みのある人物、その関係性のこと。

 まあ、文字通りそうなのだが、俺には一つ悩みがある。

 それは……。


 俺の幼馴染はマジで可愛いこと。


 それが何の問題で、俺を悩ませているかと言えば、彼女が学校中の注目を集め、勝手にファンクラブができるくらいの人気があるからだ。

 そう、それは簡単に言えばアイドル……。

 そして厄介なのが、本人もアイドル紛いな事をするのに乗り気なところだ。

 一年生の時の文化祭、彼女はステージに立ち、流行りのアイドルの曲をダンスまで完コピしてのけた。

 そこから爆発的に人気が増し、今やアイドルというよりか、スターである。


「ユウくん!」


 しかしながら、それはそれ、これはこれのように、彼女は相変わらず俺を幼馴染のユウくんとして扱う。

 ほら見てみろよ。今だって腕を組んでそのEはある胸を腕に押し付けて来ているんだぞ?

 下着はわざわざワイヤーレス。徹底してらっしゃる。


「どうしたのユウくん?」


 あざとい。

 そう、彼女はあざといのだ。

 そのあざとさと、可憐さで男子はイチコロ(死語か?)。

 だが俺は違う。これはただの幼馴染だ。昔から妹みたいに扱い、守ってやらなければならない女の子だ。

 そう……意気込んでいたのだが。


 教室にて、俺の机には今日も嫌がらせの手紙達。

 わざわざこんなことに労力を割くなんて、勤勉なことで、と俺は机を片付ける。


 昼休み。

 学食でパンを買って誰もいない校舎裏の百葉箱の近くのベンチで、買ってきたパンを齧る。

 その時間だけが唯一の安息地。

 常に白い目で見られ、いじめとまではいかないが、アンチが圧倒的に多い学内。

 卒業までの辛抱だ、そう思うしかない。

 みんな子供なのだろう。どんなに好きな芸能人でも幼馴染も親友も、近所の仲の良かったお兄さんやお姉さんはいるだろう。

 自分の都合を押し付け、そしてそれ以上の情報はシャットアウトし、狭い視野の中でしか物事を判断しない。

 そんな奴らに、どう対抗しろと言うのだろうか?


「ユウくん、帰ろー」


 呑気に俺の名前を呼び、教室まで迎えにくる幼馴染。

 そうだ、彼女は明智真彩。

 昔から容姿端麗、学業優秀の女の子。

 綺麗なストレートの黒髪と、本人曰く、憧れのアニメキャラが履いているから、とニーハイソックスを今日も履いている。その絶対領域に魅力を感じて早いもので十年以上経っている。


 家は隣だ。

 だから彼女は俺と一緒に帰る。それだけ。

 隣じゃなければ一緒には帰らないだろう。


「ユウくん……今日も嫌がらせに?」


「そうだね。でも大丈夫だから……」


「私のせい……だよね」


「まーやのせいじゃないよ」


 俺はそう言うと、手に持っていた鞄の取手をギュッと握りしめた。

 真彩がアイドルみたいな事をしなければ……なんて、考えるわけもなく、真彩はきっとこうして俺の隣にいる事で俺を守ろうとしてくれているのだろう。


「同じクラスだったら良かったんだけどね。去年みたいに」


 俯いてそう言う真彩の顔は見たくない。

 俺は精一杯明るく振る舞うと、真彩は嘘でも安心してくれたようで、俺は嘘の仮面を被り続けた。


 翌朝、いつものように真彩と一緒に登校すると、親衛隊を名乗る男子生徒の集団に囲まれた。


「おい!まあやたそから離れろ!」


「いてっ……何するんだ」


「ユウくん!ちょっと、私の大切な人を傷つけないでよ!」


 真彩がそう言うと、彼らの手が止まった。


「こんな寄生虫みたいなやつを隣に置くことありません!」


「寄生虫? 何を言ってるのあなた達……」


 やばい、真彩がキレかけてる……というか、もうキレてる!


「まーや、ストップ!一旦落ち着こう!」


「ユウくん……」


「それにお前らも悪かったな。俺もなるべく彼女とは距離を取るよ。それでいいだろ?」


 俺がそう言うと、彼らは引っ込み、真彩の背中を押して教室に先に行くように俺は言った。


 一人になった俺は、ゆっくりと教室に向かい、今日も今日とて机を片付けて椅子に座った。

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