猫又と男子高校生のなんでもない日常

松風つゆり

出逢い初め

 2023年1月7日開催『毎月300字小説企画』第1回お題『初』参加作品。

 猫又と男子高校生の出逢い。


  *


 初詣で、猫又に出逢ってしまった。


「こんにちは、少年」


 参拝中――

 突然の呼びかけに顔をあげてから、やってしまったと後悔した。

 思わず渋面になる俺を面白がるように、目の前では声の主――賽銭箱の上に行儀よく座る小柄な三毛猫が目を細めて微笑んでいる。

 猫が小首をかしげると、首輪についた小さな鈴が、ちりん、と軽やかな音を響かせた。


妖怪ボクたちの姿だけでなく言葉まで認識できる人間なんて、何百年ぶりでしょう。ねぇ、お友達になってくださいよ」


 にこやかな声音とともに、ふた股の尻尾が嬉しそうに揺れている。


 ――あぁ、神様。

 たしかに俺はついさっき、出逢いが欲しいと願ったけれど。


「……人外のオスとの出逢いなんて求めてねぇーーー!」


(300字)

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