第5話

「瑠璃、

 何か企んでない?」


「ぜんぜ~ん。

 何も企んでないよ」


「怪しいな」


「ソンナコトナイヨ。

 恭君」


「嘘くせぇ」


 そんなことを言われながら橋を渡ろうとした。


 パシッ


「何の用?

 放置がご趣味の飼い主様?」


「放置が趣味なわけじゃない」


「あっそう。

 用がないなら帰るから手離して」


「用ならある」


「何」


「家に帰って話す」


「なら、行かない。

 恭たちと帰るから」


 チッ、手をより強く掴んできやがった。


 痛い。


 顔をしかめたのが分かったのか、


 少し力が緩んだ。


「じゃあ、またね?

 飼い主様?

 さ、帰るよ。

 沙羅たち」


「そ、そうね」


 チッ、あの飼い主様め。


 急に出てきて、何だよっ?!


 冷静じゃいられなくなる。


 だから、嫌なんだ。


 引き留めたくせに追ってはくれない。


 何だよ、


 分かってたじゃねぇかよ。


 あの人にとって私は都合のいいペットだって、


 分かってたはずなのに・・・


「瑠璃。

 やっぱ、さっきの人のせいで泣いてるの?」


「泣いてる?」


 道理で少し視界がぼやけてたわけだ。


「別にさっきの人は関係ないよ。

 私の知らない人だし」


「・・・そっか」


「うん」


 何かを察知したのか聞いてこない沙羅はいい友達だと思う。


 けど、もうすぐで沙羅ともお別れだなぁ。


 飼い主のことを知られたら逃げる。


 それだけだ。

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