領主の娘・リュシーと、“光なき英雄”イズラフェルとの政略結婚から始まるこの物語は、まさに「静かに、確かに、心を揺らす恋の物語」。
盲目の魔術師イズラフェルは、自身の過去から「自分には人を幸せにできない」と信じ込んでいます。
そんな彼に寄り添い、向き合おうとするリュシーは、強く、優しく、ただ真っ直ぐに、彼の手を取ろうとします。
ふたりの距離感は絶妙で、読んでいて何度も「あと少し…!」とやきもきさせられますが、
でもその“あと少し”が縮まるたび、心に温かな灯がともるのです。
穏やかで、切なくて、でも確かに温かい。
そんな物語を読みたい方にこそ、是非読んでほしい素敵な一作です。
※読み合い企画からのレビューです
領主の娘であるリュシーが結婚させられたのは、"光なき英雄"として有名な全盲の魔術師・イズラフェルだった──という導入から始まる本作品は、政略結婚ながらも両片思いの二人が徐々に距離を縮めていく繊細な物語だ
その壮絶な過去から「自分には人を幸せにできない」と信じ込んでしまっているイズラフェルの頑なな心を、リュシーが解きほぐしていく物語と表現しても良いだろう
すれ違う二人にやきもきさせられるが、それを楽しむのが本作品
すこしずつ近付いていく二人の心に、温かいものを感じること間違いなしだ
そして、二人の関係以外の部分で、まるで地雷のように埋め込まれ"いつか必ず爆発する"と確信できる伏線もあり、そちらはそちらでハラハラさせられる
その地雷が爆発するとき、果てしてこの物語に何が起こるのか──こちらも要注目だ
繊細な筆致で描かれる、両片思いの本作品
是非一度手に取ってみてほしい
この物語には、言葉にならない感情が幾重にも折り重なっています。領主の娘として運命を受け入れようとするリュシーと、英雄として名を馳せながらも結婚に心を閉ざしたイズラフェル。二人の間に流れる静かな距離が、読者の心に余韻を残します。
貴族の婚姻という重い枷がある中で、リュシーは自分の選択を疑いません。けれど、イズラフェルとの出会いが、彼女の「当然」を少しずつ揺るがしていきます。誰かのために生きることが本当に正しいのか、彼女の迷いが丁寧に描かれています。
イズラフェルの存在もまた、特別です。英雄と呼ばれながら、どこか影を帯びた青年。その瞳が見えないからこそ、彼の言葉や仕草には、真実と偽りが入り混じっています。彼が何を考えているのか、その曖昧さが物語に深みを加えています。
二人の関係は、典型的な恋愛とは違い、最初から歪んでいます。けれど、互いに触れることで変わるかもしれない、そんな予感が物語の端々に漂います。静かに積み上げられる感情が、どこへ向かうのかを見届けたくなります。