Happy Birthday To Me

河東むく(猫)

生まれてきてくれてありがとう

 1月21日は、僕、河東遊民の誕生日である。

 

 しかし、どうも気恥ずかしいのでアピールはしなかった。これはおそらく、僕の生い立ちが関係しているだろう。昔から、誕生日を祝ってこなかった。

 

 以前にもどこかで書いたけれど、僕は宗教二世である。

 

 基本的に、生誕を祝ってはいけない。死を祝え、というような思想の宗教だった。だから、誕生日については禁止されていた。子どもの頃から、一度も誕生日を家族で祝ったことはない。もちろん他人の誕生日を祝うことも禁止されている。学校で催される、1月生まれの人の誕生日会などに参加してはいけなかった。友達の誕生日パーティにも参加することができなかった。そんな人間は社会から爪弾きにされる。僕を救ってくれたのは、物語だった。


 僕の人生には、誕生日がなかった。


 ついでにクリスマスも。クリスマスはキリストの誕生日を祝っている。むしろ、キリストの死により人々の罪は贖われたのである。よって、死を祝うのが正しい、という思想だった。


 僕は誕生日を祝ってこなかった。だからなのか、僕はどうも自分の年齢を覚えていられない。いま何歳なのか、生年月日から計算しないと出てこない。とっさに受付票などで誕生日を書く機会があると、焦ってしまう。


 配偶者の誕生日も、なかなか覚えられなかった。9月28日なのか、10月28日なのか、どちらかわからなくなる(ついでに言うと、配偶者の名前の漢字もなかなか覚えられなかった)。


 さて、そんな僕だけれど、子どもがいる。

 誕生日にはお祝いをした。

 本人はどうだか知らないけれど、僕にとっては、とても幸せな時間だった。

 生まれてきてくれてありがとう、と心の底から思えた。


 ようやく、呪いが解けたような気がした。


 だから、今年こそ、素直な気持ちで言える気がする。


 Happy Birthday To Me.

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