打ち合わせ

「今日の配信終わったよ~。みんな、どうだった?」

『う~ん。初回配信としては良い切り出し方なんじゃない?

 やっぱり、マヤのトーク力って、うちらにはないからコミュニケーションアプリと相性が良いって判断は正解だったみたいだね?』

『私的にはもう少しコミュニティーを気付いてから話すのが良かったと思うけれど……こればかりは誰もやった事がないから正解かが解らないんだよね』


 ハンドルネームの宇佐見とべリーから、そんな事をグループチャット通話で言い合いながら、彼女達は次の計画の為に互いが所持する情報データを整理する。


『私はコミュニティーのチャットサークルを通じてコミュニケーションを試したけれども、まだまだ、これからって感じかな?

 一応、二人にも確認して貰ったアプリケーションで活動するつもりだよ。ベリーの方は小説サイトからアプローチだっけ?』

『うん。前から活動していた小説サイトだから二人のと違って変な人と遭遇する確率が少ないよ。

 それに作品に関してのコミュニケーションが主体だからデータ補完としても有力だし、創作知識とかを媒体に大元の原本や心理描写を解析して全体的な歴史的文化交流の変化を測定出来ると思う』

「オッケー。計画通り、まずはお互いにそのネット上の情報ツールの開拓作業……そのあとに目的である現代の文化風習変化の測定と過去の風習変化の類似性のデータ収集。

 お互いに畑違いだから、やれる事は色々と違うけれど目的であるやりたい事についてはブレずにね?」

『ほいほい──っと。ベリーも大丈夫?』

『大丈夫よ。問題ないわ』


 それからはお互いにいまの職務内容や学業など軽い話題をして彼女達は眠くなるまで夜の会話を楽しむのであった。

 宇佐見とベリーはかの有名な同人作品のゲームに登場する名前であり、彼女達の名前も偽名であるが、オフ会を通して、お互いに顔や真の名などは教え合っているほどの中であり、その前から同じ学校生活を送る生徒であった共通性もあって自然とお互いにコミュニケーションをまめにするようになる。

 いまでは転勤や留学などでお互いに別の道を歩んでいるが、彼女達の心はいつだって一つであった。

 共通の学校で学び、共通の趣味の為に互いがその分野を開拓する。彼女達の絆は奇妙に絡まり、互いが互いを高める良き関係性を築いていた。

 恋愛よりも、まずは知的欲求の塊である好奇心を満たす事。それこそが彼女達の不思議な絆であり、また、お互いを高め合う機能として役割を担っていた。

 彼女達の進む道は過去の人物達が発掘を諦めた難題に対する着手である。故にまだ彼女達は氷山の一角に立ったに過ぎない。


 別々の道を歩んでいるが、目的が共通している彼女達の日常生活にささやかな変化をもたらしつつ、春の夜の肌寒さを忘れさせるかのような月がただ明るく照らすのであった。

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