第12話 手袋

年明けから雪が降った。

道には雪が積もり、今も降り続いている。

俺はそんな雪の中を歩いていると、道の端に男性物の手袋がひとつ落ちているのに気づいた。

「落とし物か…」

何気なくその手袋を見ると、少しづつ動いている。

「え?」

俺は目を疑った。

まるで這うように、指の部分が動き少しづつ前に進んでいる。

手袋が動いているのだ。

普通なら怖い怪奇現象なのだろうが、なぜか俺は驚きはしたが恐怖は感じなかった。

そして、しばらく目が離せずに、立ち尽くしてその手袋を見つめていた。

どれくらい時間が経ったのだろう…。

手袋は今も、まるでどこかを目指すように進み続いている。

ふと前方に視界を移すと、何かが見えた。

目を凝らしてよく見ると、女性物の手袋だった。

その手袋もまた、少しづつ動いてこちらに向かって来ている。

男性物の手袋の様に、這うようにこちらに近づいていた。

この異常な光景を目の当たりにしているのに、俺は恐怖を感じていない。


そして、その2つの手袋が出会うと、お互いの指を絡め握り合い、そしてスーッと消えた。

なぜか解らないが、その光景を見ていた俺は涙がこぼれていた。


帰る途中、パトカーが停まっていた。

野次馬の会話によると、女性がスリップした車に巻き込まれたらしい。

だいぶ酷い事故だったようだ。


家に着き、テレビをつけるとニュースが流れていた。

帰宅途中の男性が、スリップした車に巻き込まれ死亡したらしい。


俺は再び涙を流していた。

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