第2話 天狐、名前を貰いました

「う~んいいのぅこのふわふわ感たまらぬ!」


銀髪に金目、白い二本の角の生えた14~15歳位の少女がブラシ片手に銀色の毛をした子狐(私)をブラッシングしていた。

この少女?の名は魔王リル。私の主人である。

リル様によると私(名前はまだ無い)の正格な種族は天狐テンコといって妖狐の最上位モンスターらしい。


3~4年もすれば言葉も話せるようになり、10年もすれば人型にも変化が出来るようになるらしい。

それが今の私だ。


ただ、リル様曰く私はリル様の体の一部と魔力の大半を使い作られたユニークモンスターであり、そもそも天狐としても規格外だとか…。もしかしたら天狐の先、神狐にも成れるのでは?とか言っていた。


どうでも良いけど。


生後10日の私のお仕事はリル様にモフられる事。暇があればリル様は、私をモフったりブラッシングしたりするのです。

仕事を疎かにして、ダークエルフのアリアさんに


「モフってないで仕事して下さい!」


なんて怒られたりもしていた。


仕事は先に終わらせて下さいね!リル様。


「よし、ブラッシング終わりじゃ!」


リルは満足そうに笑った。


リル様が満足したなら私も行こう。この城を見てまわって何があるのかちゃんと把握したいし。


私が膝から降りて部屋から出ようとすると


「そうじゃ、天狐よ。魔力も戻ったし名を付けてやろう。」


とリル様が言った。


名付けですと!ようやく名無し卒業だ!


私はリル様の元へと駆け寄った。


この世界において魔物は、名を付けられる事でネームドモンスターとなり、モンスターとしての格が上がり魔力や知力が上がり、進化する事がある。


その為か名を付けると魔力を大量に失い、下手をすると魔力が戻らず弱体化してしまったり死んでしまう事もあるらしい。

なので基本、魔王といえどホイホイと名を与えたりしない。


「10日間ずっと考えたのじゃ。今日からお前は『ミラージュ』じゃ!」


「コン!」


『ミラージュ』か…。これが私の名前…。


あれ、何か力が…。いや、体も光ってる!

ビックリしている間に体は一回りほど大きくなり、尻尾や体毛はよりモフモフになっていた。


「うわ…。大きくなった…。え、喋れるようにもなってる!」


「ふむ、どうじゃ?ミラちゃん。新しい力を得た気分は。」


リルはミラージュを抱き上げた。


「リル様、ありがとうございます。すごく力がみなぎっています。」


「よいよい。これからも妾の癒しとしてモフられるがよい。」


「あの~その事ですが。」


「何じゃ?」


リルは首を傾げた。


「リル様、お仕事疎かにしてますよね?」


「うっ…。」


リルは汗をタラタラと流していた。


「ですのでー。」


ポムン!


と音がすると同時にミラージュの姿が狐から銀色のストレートヘアに狐耳、尻尾を生やしたメイド服姿の4歳~5歳位の少女へと変化していた。


「私が補佐しようと思います。」


「な、何じゃとー!」


「おサボりはさせませんよ。魔王様!」


ミラージュはニコリと笑った。


「嫌じゃ~!」


「嫌ではありません!」


ミラージュはため息をついたのだった。


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