私が猫ならば

秋野 公一

第1話 にゃあにゃあ

私が猫ならば、ゴロゴロニャアニャとないて、1日を終えるのに。どこに行くでもなく散歩し、出会ったすべての人に愛されて、気ままに暮らすだけなのに。ニャアニャア。部活帰りの女子高生、片想いが実らない男子中学生、戦争から帰ってきて心が壊れた兵士にも撫でてもらえるのに。ただ甘えるだけでそれを受け止めてくれる世界なのに。なぜ、私は人間に産まれてしまったのだろう。ただ苦しいだけの、この日々になんの価値があるのだろう。歯科医の息子として生を受け、何もなければ裕福に暮らせたはずなのに。離婚で全てが狂ってしまった。口惜しい口惜しい。何も知らなぬ馬鹿どもに後ろ指を刺される日々が屈辱で屈辱で仕方ない。それならばいっそ、時代、場所問わず愛される猫でありたかった。次こそは、産まれるのであれば、猫になりたい。ニャアニャア、ゴロゴロ。口惜しい。口惜しい。

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私が猫ならば 秋野 公一 @gjm21

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