贈り物は絵葉書に乗って〜モロッコより
@masamasa0930
第1話 モロッコ・フェスより
親愛なるエミ
サハラの風が吹くモロッコの古都、フェスからこの絵葉書を送ります。
青いタイルが輝く美しいメディナの一角で、この都市の心臓が鼓動しているのを感じるわ。
細い迷路のような通りには、スパイスや染料、革製品が所狭しと並べられていて、どこを見ても色彩と香りの洪水よ。
昨日、偶然目にした光景が今も忘れられないの。
メディナを歩いていると、ある小さな広場に人だかりができていたの。
興味本位で近づいてみると、そこにはアラブの伝統的な音楽を奏でるバンドがいて、周りには観客が踊っていたわ。
でもその中央には、音楽に合わせて蛇を操る蛇使いがいたの。
蛇は黒い布にくるまれていて、笛の音に合わせるようにゆっくりと布の中から顔を出したの。
まるで音楽の魔法にかかったかのように、蛇の体が優雅に揺れるのを見て、私は時間を忘れて見入ってしまった。
その時、突然観客の中の一人の少年が蛇の方に駆け寄ったの。
危ないと思った瞬間、蛇使いが笑顔でその少年に蛇を手渡したのよ!
少年は少し緊張した面持ちだったけれど、やがてその蛇を抱きしめながら満面の笑みを浮かべたの。
その瞬間、周りの人々も拍手喝采で祝福し、蛇使いも満足そうに頷いていたわ。
フェスではこうした小さな出来事が、誰かの日常を特別なものに変えていくんだなって思ったの。
日が暮れると、ランタンの光が通りを照らし出して、昼間とは全く違う幻想的な世界に変わるわ。
この街には、まるで時間そのものが溶け込んでいるような不思議な感覚があるの。
エミにもいつかこの街の空気を感じてほしい。
フェスの迷路の中で、あなたならどんな物語を見つけるのかしら。
次はどの街から絵葉書を送ろうかしら?
それを考えるのもまた楽しみだわ。
愛を込めて、
リサ
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