Side Episode②魔物たちの歴史

今回は【魔王】が【勇者】に敗れ、魔物たちが結界に閉じこもってから数百年後、時系列からしてルイたちがこの世界に来る少し前のお話だ。

いよいよ苛烈さを増してきた三人の冒険。そんな三人が侵しつつあるこの魔物たちのいまの平和な生活は、どのようにして築かれたようなものなのか。それらが綴られている記事を三人が以前見つけたので、今さらながらここで読んでみよう。


2983年2月13日。 第30代目国王として、ローム・ソルスティス王が即位なさられた。彼は国中に「私が皆をこの狭苦しい世界から開放してやろう」と宣言した。民衆は新しい王の施策に沸き上がった。

2月15日。王は結界がどのように作られたのか、かつての【魔王】はなぜ勇者に敗れたのかを探るべく、タイムマシンの開発を試み、それにあたって王立研究所の主任である“コボルト”のGグリム・ティーニー氏を呼び寄せ、タイムマシンの開発を命じた。そして、彼の護衛として、当時どこからともなく現れ実績を積み続けていたBブリング・クランチ氏を彼の下に副主任という形でつけた。

2月20日。王はいずれくるであろう人間との戦争に備え、軍隊を強化することを決めた。軍団を兵士たちの性質によって5つに分け、各地に分散配置し、それらを統括する将として、

すべての種族より強者たちを選りすぐった最強の近衛兵団の将軍には、誇り高き最強のスケルトンの騎士・エレアスを、

死を超越した無限を誇るアンデッド軍団の長として、ネクロマンサー・ゾードを、

本来命なきに生命を宿らせて作った機械軍団を統べる将として、クランチ氏の作ったミスリルのゴーレム・アーサーを、

最も人に近しい種族たちをまとめる将として、人に追われ匿われて以降ゾードの弟子となったダークエルフ・リーナを、

全ての獣の将として、尊大であり凄まじい怪力を誇る獣王・オメガを、

それぞれ「五大将軍」と称させた。

また、参謀としてクランチ氏及び呪術の天才・ザウロ氏を迎え入れた。

3月2日。各軍の編成が完全に完了し、いよいよいつでも人間と戦えるよう準備が整った。しかし、件のタイムマシンは未だ完成する兆しを見せず。国の期待はティーニー氏一人に集まる事となった。

3月17日。ティーニー氏は一度タイムマシンの研究を部下に任せ、その間に考えついていたという新しい戦争のための兵器をいくつも開発した。

クランチ氏はこれを見て、「これアーサーにつけてみたら面白いんじゃね?」と言い、アーサーの身体に本当にそれを組み込んでしまった。相変わらず自由奔放な人間である。

3月20日。例の兵器とそれらを組み込んだアーサーの試験運転が行われた。結果は上々、ティーニー氏はご機嫌だった。

5月4日。オメガ率いる第五軍団の中で離反が起こった。離反した軍勢は結界の外に出て人間に挑みかかったのだ。もちろん、もともと5つの軍団全てで人間に挑むという想定だったのにたった一軍団のそれも一部で人間たちに勝てるわけがなく、あっという間に討ち滅ぼされた。魔物からの大規模襲撃を警戒した人間は軍隊を強化した。そのため、我々も更に軍団を強化せざるを得なくなった。

7月15日。研究所で開発中のタイムマシンが暴発を起こし、それに巻き込まれて主任のティーニー氏含めた研究員数名が亡くなった。主任のティーニー氏に至っては遺体すら残っていなかった。王国の民は彼の死を悲しむよりも、彼らを開放する鍵となるタイムマシンの開発が遅れたほうにひどく憤った。ほとんどの主要人物たちもティーニー氏に罪を着せようとしたが、副主任クランチ氏及びローム氏のみがそれに反対した。実験は決して彼だけのせいではない、彼を焦らせた私達も悪いのだ、と。主要人物たちの中でもとくに大きな発言権を持つ二人には誰も逆らうことができず、結局実験はクランチ氏を主任とすることで再開した。

9月16日。クランチ氏が奇妙な客を二人つれてきた。彼は「こいつらはとんでもない強者だ。戦力として期待できるぜ。」といったが、五大将軍などを始めとした新勢力たちの台頭に権力を奪われ頭を悩ませていた旧貴族たちは彼の申し入れを断固として反対し、その二人は結局クランチ氏の護衛となった。

11月23日。この世界と人間の住まう世界をつなぐ出入り口の一つ『闇の鏡』が行方不明となった。本来なら、王宮にある鏡から特定の位置に配置してあるその鏡に転移する仕組みなのだが、2つの鏡が両方とも消えたせいで、この世界のどこからあちらの世界のどこへつながっているかもわからなくなってしまった。まあいいだろう。誰かが通れば我々にも自動的に伝わるようになっているし、そもそもあのような見た目ボロ鏡に触れるような物好きはそう簡単にはいないだろう。

11月26日。三人の何者かがこの鏡を使った。


記事はここで途切れている……

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