第7話「戦略の果て」



「残り4分」


サーバールームの巨大なスクリーンには、世界中の株価が表示されている。全ての市場が、深い赤に染まっていた。


「見事だな」上條が微笑む。「ここまで来られたのは、お前が初めてだ」


彼は巨大なサーバーの前に佇んでいた。


「30年前、私は全てを失った。家族も、財産も、そして...信じていた市場の理想も」


スクリーンには次々と、世界の株価暴落のニュースが映し出される。


「だが、これで全てがリセットされる。新しい秩序が—」


「違います」


裕也が一歩前に出る。


「市場は、誰のものでもない」


星野がネックレスのチップを、端末に差し込む。


「それが、あなたが教えてくれた最初の教訓だったはずです」


```

[真理の瞬間]

「極意解放Lv.1」を獲得

全ての学びが

一つに結びついた

```




「残り3分」


画面に映る数字が、裕也の脳裏を焼き付く。


「甘いな」上條が冷笑を浮かべる。「お前のような若輩が、私の30年の計画を止められると?」


彼がキーボードを叩く。巨大なスクリーンにプログラムのコードが次々と流れていく。


「このアルゴリズムは、世界中の証券取引所に接続している。あと3分で、全ての市場が—」


「見えた!」


星野が叫ぶ。彼女の端末に、プログラムの核心部分が表示される。


「これは...まさか」


「気付いたか」上條の表情が変わる。「私のプログラムの本質に」


裕也は画面を凝視する。そこには、信じられない数字の連なり。


「これは、バブル崩壊時の取引データ...?」


「その通りだ」上條が告げる。「あの時の崩壊を、完全に再現する。そして—」


「いいえ」裕也が端末を操作し始める。「このコードには、致命的な欠陥がある」


```

[運命の分岐点]

「コード解読Lv.1」を獲得

プログラムの真実が

見えてきた

```




「残り2分」


「欠陥だと?」上條の声が冷たく響く。


「はい」裕也が端末を操作しながら答える。「このプログラム、30年前のデータを完全再現しようとしている。でも—」


「今の市場は、当時とは違う」星野が続ける。「取引速度、取引量、そして—人工知能の存在」


上條の表情が強張る。


「AIによる自動取引。それは30年前には存在しなかった」裕也が言い切る。「あなたのプログラムは、その変数を計算に入れていない」


「だからどうした!」上條が叫ぶ。「崩壊は崩壊だ。手段が違っても—」


「違います」


裕也がキーボードを叩く。画面に新しいコードが浮かび上がる。


「現代の市場には、安全装置がある。そして、それを制御しているのは—」


「人工知能か...」上條の声が震える。


「ええ、あなたのプログラムは、AIによって食い止められる。そして、その反動で—」


```

[逆転の真実]

「市場解読Lv.MAX」を獲得

現代の市場システムの

全貌が見えた

```


上條の顔から血の気が引く。


「まさか、逆にバブルを...!?」


(第三幕・終)





「残り60秒」


「冗談じゃない...」上條が怒りに震える。「30年の計画が、AIごときに...!」


裕也の予測通り、世界中の取引所のAIが異常を検知し始めていた。


「45秒」


「上條さん!」裕也が叫ぶ。「プログラムを止めてください。このままでは—」


「黙れ!」


上條が引き金を引く。銃弾が裕也の肩を掠める。


「30秒」


「見よ!」上條が狂気じみた笑みを浮かべる。「これが新しい世界の—」


その時、スクリーンが真っ赤に染まる。世界の株価が、一斉に跳ね上がり始めた。


「これは...」星野が息を呑む。


「AIが暴走を始めた」裕也が説明する。「売り一色の市場で、AIが一斉に買い始める。そして—」


```

[混沌の頂点]

「予測不能Lv.1」を獲得

制御不能な状況下でも

本質を見抜く力を得た

```


「15秒」


「まさか」上條が絶叫する。「私の計画が、新たなバブルを生み出すだと!?」


裕也は最後のカードを切る。


「ならば—」


(第7章・完)

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