第30話
「まだ……終わりじゃない。」
僕は震える体を奮い立たせ、剣を握り直した。
ルシフェルは余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりと手をかざす。
「まだ戦うつもりか? 貴様の力では、私には勝てん。」
「それは……試してみないとわからないさ!」
僕は剣に魔力を込め、一気に駆け出した。
「《閃光斬》!」
剣が光を放ち、ルシフェルに向かって振り下ろされる。
しかし――
「無駄だ。」
ルシフェルは軽く手を振るだけで、僕の攻撃を闇の障壁で受け止めた。
「……っ!」
「やはり、その程度か。」
ルシフェルはため息をつき、手を前にかざす。
「ならば、これで終わりにしてやろう。」
◆
「《冥府の槍》」
漆黒の槍が無数に生まれ、僕たちに向かって襲いかかる。
「レオン!」
セシリアが光の盾を展開し、イリスが防御魔法を発動する。
「《魔力障壁》!」
二人の魔法が僕たちを守るが、それでも黒い槍の威力は凄まじい。
(このままじゃ……!)
僕は必死に剣を振るい、槍を弾く。
「お前の力では、いずれ力尽きる。」
ルシフェルは冷たい目で僕を見下ろしていた。
(違う……何かが違うんだ……。)
僕は息を整え、剣を見つめた。
この剣は、ただの武器ではない。
(本当に……僕にはどんな魔法でも使えるのか?)
そうだとすれば――
「……試す価値はあるか。」
僕は静かに剣を構えた。
◆
「レオン様……?」
セシリアが驚いたように僕を見つめる。
僕の剣が、淡い光を帯び始めていた。
「……来いよ、ルシフェル。」
「ほう?」
ルシフェルは興味深そうに目を細めた。
「ならば見せてみろ。その剣の真なる力を。」
◆
「《聖光の剣》!」
僕が剣を振るうと、眩い光が辺りを包み込んだ。
ルシフェルの闇の槍が、その光に触れた瞬間、霧散していく。
「……なに?」
ルシフェルの表情が僅かに歪む。
「この力……!」
「どうやら、本当に僕は"どんな魔法でも使える"らしいな。」
剣に込められた力が、これまでとは違う感覚を生み出していた。
(これなら……勝てる!)
僕は力強く剣を握りしめ、ルシフェルに向かって突撃した。
◆
「《閃光剣舞》!」
僕の剣から無数の光の刃が生まれ、ルシフェルを取り囲むように飛んでいく。
「くっ……!」
ルシフェルは即座に防御魔法を発動するが、光の刃は闇の障壁を打ち砕き、彼の肩をかすめた。
「ぐ……!」
ルシフェルが初めて苦しげな表情を浮かべる。
「どうした? 余裕じゃなかったのか?」
僕は剣を構え直し、さらに間合いを詰める。
「なめるな……!」
ルシフェルは怒りを露わにし、漆黒の魔力を纏う。
「だが、お前ごときに、この私が――!」
「……もう終わりだ。」
僕は剣を振り上げ、全ての魔力を込めた。
「《聖光の一閃》!」
眩い光が迸り、ルシフェルの魔力を打ち消していく。
「ぐああああああ!!!」
ルシフェルの叫びが響き渡り、彼の体が光に包まれていく。
そして――
爆発的な閃光と共に、ルシフェルの姿は消えた。
◆
「……終わった?」
僕は剣を下ろし、肩で息をする。
戦いの余韻が、まだ体に残っていた。
「レオン様!」
セシリアが駆け寄ってきて、僕の手を取る。
「ご無事で……本当によかった!」
「……ああ。」
僕は微笑み、剣を鞘に収めた。
「ルシフェルは……?」
イリスが辺りを見渡す。
「……消えたみたいね。」
「でも、これで終わったわけじゃない。」
僕は静かに呟いた。
「奴がどこへ行ったのか……まだわからない。」
セシリアも表情を引き締める。
「この戦いは、まだ続くのですね。」
「……ああ。」
僕は決意を胸に、夜空を見上げた。
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