第30話

「まだ……終わりじゃない。」


僕は震える体を奮い立たせ、剣を握り直した。


ルシフェルは余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりと手をかざす。


「まだ戦うつもりか? 貴様の力では、私には勝てん。」


「それは……試してみないとわからないさ!」


僕は剣に魔力を込め、一気に駆け出した。


「《閃光斬》!」


剣が光を放ち、ルシフェルに向かって振り下ろされる。


しかし――


「無駄だ。」


ルシフェルは軽く手を振るだけで、僕の攻撃を闇の障壁で受け止めた。


「……っ!」


「やはり、その程度か。」


ルシフェルはため息をつき、手を前にかざす。


「ならば、これで終わりにしてやろう。」



「《冥府の槍》」


漆黒の槍が無数に生まれ、僕たちに向かって襲いかかる。


「レオン!」


セシリアが光の盾を展開し、イリスが防御魔法を発動する。


「《魔力障壁》!」


二人の魔法が僕たちを守るが、それでも黒い槍の威力は凄まじい。


(このままじゃ……!)


僕は必死に剣を振るい、槍を弾く。


「お前の力では、いずれ力尽きる。」


ルシフェルは冷たい目で僕を見下ろしていた。


(違う……何かが違うんだ……。)


僕は息を整え、剣を見つめた。


この剣は、ただの武器ではない。


(本当に……僕にはどんな魔法でも使えるのか?)


そうだとすれば――


「……試す価値はあるか。」


僕は静かに剣を構えた。



「レオン様……?」


セシリアが驚いたように僕を見つめる。


僕の剣が、淡い光を帯び始めていた。


「……来いよ、ルシフェル。」


「ほう?」


ルシフェルは興味深そうに目を細めた。


「ならば見せてみろ。その剣の真なる力を。」



「《聖光の剣》!」


僕が剣を振るうと、眩い光が辺りを包み込んだ。


ルシフェルの闇の槍が、その光に触れた瞬間、霧散していく。


「……なに?」


ルシフェルの表情が僅かに歪む。


「この力……!」


「どうやら、本当に僕は"どんな魔法でも使える"らしいな。」


剣に込められた力が、これまでとは違う感覚を生み出していた。


(これなら……勝てる!)


僕は力強く剣を握りしめ、ルシフェルに向かって突撃した。



「《閃光剣舞》!」


僕の剣から無数の光の刃が生まれ、ルシフェルを取り囲むように飛んでいく。


「くっ……!」


ルシフェルは即座に防御魔法を発動するが、光の刃は闇の障壁を打ち砕き、彼の肩をかすめた。


「ぐ……!」


ルシフェルが初めて苦しげな表情を浮かべる。


「どうした? 余裕じゃなかったのか?」


僕は剣を構え直し、さらに間合いを詰める。


「なめるな……!」


ルシフェルは怒りを露わにし、漆黒の魔力を纏う。


「だが、お前ごときに、この私が――!」


「……もう終わりだ。」


僕は剣を振り上げ、全ての魔力を込めた。


「《聖光の一閃》!」


眩い光が迸り、ルシフェルの魔力を打ち消していく。


「ぐああああああ!!!」


ルシフェルの叫びが響き渡り、彼の体が光に包まれていく。


そして――


爆発的な閃光と共に、ルシフェルの姿は消えた。



「……終わった?」


僕は剣を下ろし、肩で息をする。


戦いの余韻が、まだ体に残っていた。


「レオン様!」


セシリアが駆け寄ってきて、僕の手を取る。


「ご無事で……本当によかった!」


「……ああ。」


僕は微笑み、剣を鞘に収めた。


「ルシフェルは……?」


イリスが辺りを見渡す。


「……消えたみたいね。」


「でも、これで終わったわけじゃない。」


僕は静かに呟いた。


「奴がどこへ行ったのか……まだわからない。」


セシリアも表情を引き締める。


「この戦いは、まだ続くのですね。」


「……ああ。」


僕は決意を胸に、夜空を見上げた。



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