第27話
魔装騎士を倒し、僕たちはさらに神殿の奥へと進んだ。
「……やけに静かですね。」
セシリアが周囲を警戒しながらつぶやく。
確かに、あれだけ強力な守護者を倒したというのに、次の敵が現れる気配がない。
「気を抜かないほうがいいわ。」
イリスが冷静な声で警告する。
「魔法で封じられた場所は、ただの罠や魔物だけじゃなく、もっと別の仕掛けがあることが多いの。」
「別の仕掛け……?」
「例えば、"試練"。」
◆
やがて、僕たちは神殿の最奥にたどり着いた。
そこには巨大な扉がそびえ立っていた。
扉の中央には複雑な魔法陣が刻まれ、淡い青白い光を放っている。
「これが……封印の扉?」
「ええ。そして、おそらくこの扉を開けるには試練を乗り越えなければならないでしょう。」
イリスが慎重に扉の魔法陣を観察する。
「レオン様、この封印を解けるのはおそらくあなたですわ。」
「僕……?」
「ええ。あなたの魔力には"どんな魔法でも扱える"という特性がある。ならば、この封印も解除できる可能性が高いですわ。」
(どんな魔法でも……か。)
まだ自分の力を完全に理解しているわけじゃない。
でも、試してみる価値はある。
「……やってみます。」
僕は封印の扉に手をかざした。
すると、魔法陣が強く輝き、僕の魔力を吸い取るような感覚が走る。
「――っ!」
途端に、意識がどこかへ引き込まれるような感覚に襲われた。
◆
気がつくと、僕は見知らぬ空間に立っていた。
広大な闇の中、ただ一つの光が浮かんでいる。
「……ここは?」
「ここは、お前自身の内なる世界。」
突然、声が響いた。
目の前に現れたのは、一人の男。
漆黒のローブを纏い、金色の瞳を持つ不思議な存在だった。
「お前はまだ、自分の力の本質を理解していない。」
「僕の……力?」
男は静かに頷いた。
「お前の魔力は"あらゆる魔法を扱える"ものだ。しかし、それは単なる"適性"ではない。」
「……どういうことですか?」
「お前の力は"無限の可能性"そのものだ。」
「無限の……可能性?」
男は手をかざし、目の前に無数の魔法陣を浮かべた。
「例えば、火の魔法を学べば、炎の最上位魔法にたどり着くことができる。」
「……!」
「風、水、土、雷、光、闇――すべての魔法を極めることすら可能だ。」
「そんなこと……。」
「だが、その力を完全に解放するには、お前自身が"己の限界を超える覚悟"を持たなければならない。」
男は僕をじっと見つめる。
「この試練は、お前がその覚悟を持てるかどうかを問うものだ。」
次の瞬間――
視界が真っ白に染まり、僕は再び神殿の中へと戻っていた。
「レオン様!」
セシリアが心配そうに駆け寄る。
「大丈夫ですの!? いきなり意識を失われて……!」
「……ああ、大丈夫。」
僕は扉の前に立ち、ゆっくりと手を伸ばした。
そして――
「……開け!」
僕の魔力が流れ込むと、扉の魔法陣が光を放ち、ゆっくりと開いていった。
◆
扉の奥には、一つの台座があった。
その上には、美しく輝く剣が浮かんでいる。
「これが……秘宝?」
剣の刃は透き通るような青い光を放ち、柄には王家の紋章が刻まれていた。
「レオン様……その剣を。」
セシリアの言葉に促され、僕は剣に手を伸ばした。
――瞬間、剣が強く輝き、僕の中に"何か"が流れ込んできた。
(これは……!)
剣と共鳴するように、僕の魔力が震える。
まるで、剣が僕に何かを託しているような感覚だった。
「レオン……あなたの力が、今、本当に目覚めようとしているわ。」
イリスが静かに言った。
僕は剣を握りしめ、強く頷いた。
(この力が何なのか、僕はもっと深く知る必要がある。)
そう決意しながら、僕は剣を持ち上げた。
___________________________________________________
感想や改善点をコメントして頂けると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます