第13話
「レオン様、ご協力いただけるわよね?」
イリスは部屋の中へと堂々と入ってきた。黒いローブの裾を翻しながら、妖しく微笑む。
「い、いやいやいや! もう実験とか勘弁してくれない!?」
「ふふ、大丈夫よ。今回は"痛みを伴う実験"はしないわ。」
「"今回は"って、今まではあったのかよ!!?」
慌てて後ずさる僕を、イリスはすばやく詰め寄り、腕を掴んだ。
「おとなしくして。これは王命でもあるのだから。」
「いや、それ絶対嘘でしょ!? そんな命令、王様から聞いてないぞ!」
「細かいことは気にしないで。さあ、こっちへ。」
僕の抗議は一切聞き入れられず、そのままイリスの研究室に連れ込まれてしまった。
◆
「……で、僕は何をされるんですか?」
研究室に連れ込まれた僕は、中央の魔法陣が描かれた床の上に立たされていた。部屋には数々の怪しげな道具や魔導書が並んでおり、明らかに"普通ではない"空間だった。
イリスは魔法陣の前で本を広げ、何やら詠唱を始める。
「今回は、あなたの魔力の"性質"を調べるわ。」
「僕に魔力なんてないって何度言えば……。」
「測定不能の結果が出たのに、"ない"はずないでしょう?」
(……もうそれは勘弁してほしいんだけど。)
「では、始めるわね。」
イリスが杖を振ると、魔法陣が青白く輝き始めた。
「え、ちょっと!? なんかすごい光ってるんだけど!?」
「心配しなくても、害はないわ。ただ、あなたの体に流れる魔力の波長を解析するだけだから。」
「本当に害ないんだろうな……?」
「ええ、たぶん。」
「たぶん!?」
「ふふっ、冗談よ。信じていいわ。」
(絶対に信じられない……!)
◆
光が収まると、イリスはじっと僕を見つめた。
「……興味深いわ。」
「な、何が?」
「やっぱり、あなたの魔力は普通の人間とは違う。いや、それどころか……"異質"と言うべきかしら。」
「い、異質……?」
「通常、魔力はある程度流れのパターンが決まっているのだけれど、あなたの場合、その流れが不規則で、しかもどんな魔法にも適応できる性質を持っているわ。」
「どんな魔法にも……?」
「ええ。つまり、あなたが本気で魔法を学べば、どんな魔術師よりも優れた力を持つ可能性があるということよ。」
「いやいやいや! 僕、魔法なんて使えないし!」
「まだ気づいていないだけよ。試しに、これを持ってみて。」
そう言ってイリスは、青く光る魔石を差し出した。
恐る恐る手に取ると――
「えっ!? な、なんか手が熱い!」
「やっぱり。あなたの魔力が魔石と共鳴しているわ。」
魔石が淡く光り、僕の手のひらから微弱な光が漏れ出している。
「これ……どうなってるの?」
「あなたの魔力が自然に流れ出ている状態ね。魔法を使う意志がなくても、あなたの体は魔力を放出しているみたい。」
「え、えぇ……。」
「ふふ……やっぱり、面白い存在だわ。」
イリスは満足げに微笑んだ。
「この研究、もっと続けさせてもらうわね?」
「ええええ!? もういいよぉ!!!」
こうして、僕はまたしても"謎の力を持つ存在"として認識されてしまうのだった――。
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