第10話

「――レオン様、次の予定をお伝えします。」


魔法騎士としての適性試験を受け、さらにエリナの厳しい剣の鍛錬を受け続けた僕だったが、休む間もなく新たな"試練"が待っていた。


「……次?」


朝食を終えたばかりの僕の前で、執務官が恭しく巻物を広げる。


「本日は王女セシリア様主催の舞踏会がございます。レオン様もご招待されております。」


「ぶ、舞踏会!?」


僕は驚き、思わず椅子から立ち上がった。


「待ってください! 僕はただの村人ですよ!? そんな華やかな場に行くのは場違いじゃ……」


「何を言っているのです? レオン様は"王女の護衛"なのですから、当然ご出席いただきます。」


「いや、護衛って言っても……」


「それに、セシリア様が直々に『レオン様も必ず来てくださいませ!』とおっしゃっておりました。」


(あの王女様めぇぇぇ……!!)


またしても断る権利などない状況に追い込まれた僕は、結局、舞踏会に出席することになったのだった。



夜、王宮の大広間


煌びやかなシャンデリアが輝く広間には、華やかな衣装を身に纏った貴族たちが集まっていた。優雅な音楽が流れ、皆が楽しげに談笑している。


(場違い感がすごい……!)


村の素朴な生活に慣れていた僕にとって、こうした華やかな場はどうにも落ち着かない。


「レオン様!」


金色のドレスを纏ったセシリアが、嬉しそうに駆け寄ってきた。


「おいでくださって光栄ですわ!」


「え、ええ……。」


「せっかくですから、一曲踊りましょう?」


「いやいやいや! 僕、踊れませんから!」


「まあ、大丈夫ですわ。私がリードしますから♪」


にっこりと微笑むセシリア。


(いや、そういう問題じゃない!!)


しかし、周囲の貴族たちが興味深そうにこちらを見ているのがわかる。


「ふむ、やはり王女様のお相手は、あの青年か……」


「"大賢者の生まれ変わり"ならば、相応しいかもしれん。」


「ま、また変な噂が広まってる……!?」


僕は断ることもできず、結局、セシリアとダンスをする羽目になった。



しかし――


「わっ……!?」


足がもつれて、セシリアのドレスを踏んでしまいそうになる。


「あっ……!」


「おっと……!」


とっさに彼女の手を引いて支える僕。


その瞬間、広間中の視線が僕たちに集中した。


「まぁ……!」


「なんと優雅なエスコート……!」


「レオン様、まるで舞踏の達人のようですわ!」


(違う違う違う!! 今のはただの事故です!!)


焦る僕をよそに、セシリアは頬を染めながら微笑んだ。


「ふふっ、レオン様……やはり貴方は素敵ですわ♪」


(ああ……また誤解が広まる未来しか見えない……!)


こうして、僕の"舞踏会デビュー"は、想定外の形で幕を閉じたのだった。




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