第10話
「――レオン様、次の予定をお伝えします。」
魔法騎士としての適性試験を受け、さらにエリナの厳しい剣の鍛錬を受け続けた僕だったが、休む間もなく新たな"試練"が待っていた。
「……次?」
朝食を終えたばかりの僕の前で、執務官が恭しく巻物を広げる。
「本日は王女セシリア様主催の舞踏会がございます。レオン様もご招待されております。」
「ぶ、舞踏会!?」
僕は驚き、思わず椅子から立ち上がった。
「待ってください! 僕はただの村人ですよ!? そんな華やかな場に行くのは場違いじゃ……」
「何を言っているのです? レオン様は"王女の護衛"なのですから、当然ご出席いただきます。」
「いや、護衛って言っても……」
「それに、セシリア様が直々に『レオン様も必ず来てくださいませ!』とおっしゃっておりました。」
(あの王女様めぇぇぇ……!!)
またしても断る権利などない状況に追い込まれた僕は、結局、舞踏会に出席することになったのだった。
◆
夜、王宮の大広間
煌びやかなシャンデリアが輝く広間には、華やかな衣装を身に纏った貴族たちが集まっていた。優雅な音楽が流れ、皆が楽しげに談笑している。
(場違い感がすごい……!)
村の素朴な生活に慣れていた僕にとって、こうした華やかな場はどうにも落ち着かない。
「レオン様!」
金色のドレスを纏ったセシリアが、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「おいでくださって光栄ですわ!」
「え、ええ……。」
「せっかくですから、一曲踊りましょう?」
「いやいやいや! 僕、踊れませんから!」
「まあ、大丈夫ですわ。私がリードしますから♪」
にっこりと微笑むセシリア。
(いや、そういう問題じゃない!!)
しかし、周囲の貴族たちが興味深そうにこちらを見ているのがわかる。
「ふむ、やはり王女様のお相手は、あの青年か……」
「"大賢者の生まれ変わり"ならば、相応しいかもしれん。」
「ま、また変な噂が広まってる……!?」
僕は断ることもできず、結局、セシリアとダンスをする羽目になった。
◆
しかし――
「わっ……!?」
足がもつれて、セシリアのドレスを踏んでしまいそうになる。
「あっ……!」
「おっと……!」
とっさに彼女の手を引いて支える僕。
その瞬間、広間中の視線が僕たちに集中した。
「まぁ……!」
「なんと優雅なエスコート……!」
「レオン様、まるで舞踏の達人のようですわ!」
(違う違う違う!! 今のはただの事故です!!)
焦る僕をよそに、セシリアは頬を染めながら微笑んだ。
「ふふっ、レオン様……やはり貴方は素敵ですわ♪」
(ああ……また誤解が広まる未来しか見えない……!)
こうして、僕の"舞踏会デビュー"は、想定外の形で幕を閉じたのだった。
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