赤ずきんさんは狼が嫌い
イケのタコ
第1話
これは、ある小さな村のお話。
とっても小さな村で赤ずきんと呼ばれた可愛らしい少女ような、美少年がいました。
それはそれは隣村、更にその隣村まで噂が広がるほどの可愛さでした。
誰もが羨ましいがるサラサラの黒髪、傷一つない陶器のような艶やかな肌、誰もを魅了し翻弄させました。
「ぶさけんな! 死んでるだろ!」
とは昔のこと、今は普通の青年と成長を遂げていた。
淡麗な容姿は長所だったけれど、女のようだと言われるたびに赤ずきんは心を閉ざし、絶対誰にも負けない男になると誓ったのです。
そのおかげか、低かった身長は伸び、細かった腕はたくましく筋肉のついた腕となりサラサラの髪の毛は短く切りそろえました。
「いいか、このままだと狼に喰われておしまいだ。なんとしても見つけ出して殺す。」
怒りで眉は曲がり、赤ずきん勢いに任せて机を叩く。
少女ような可愛らしさも微塵もない言葉が赤ずきんから飛ぶ。
当然、机の周りに集まっていた村人達がビクリッと驚く。
机の上には地図や『狼の生態』が書かれた文章、色んな紙が散らばり、作戦会議中であった。
「だけど、森は広いんだ。一度見た鹿をもう一度探すほど、探すのは果て近い。狼なんて見つかりはしない。」
若い男の村人が意見する、赤ずきんも充分承知の上だった。
あの森で狼を探すとなると、見つけたとしても自分が家まで戻れるのか怪しいほど広大な樹海。
「分かっている、それでも行かないと犠牲者が増えるだけだ。ただ見ているだけは嫌なんだ。僅かな賭けに俺は賭けたいんだ。」
赤ずきんはグシャリと紙を掴んだ、この一週間で何人の村人が犠牲になったことか。考えるだけで悔しさが増す。
「赤ずきん、それは危険すぎる。誰もお前が犠牲になればいいなんて思わない。」
そうだそうだ、村人達はうなづいた。赤ずきんもこの村住民で家族、決して一人も失いたくない赤ずきんを村人達は止めようとする。
けれど振り返ることはなく赤ずきんは前に進む。
「大丈夫、俺はもう立派な男ですから。」
「赤ずきん……分かった。その覚悟があるなら俺達はもう何も言うことねぇ。」
「ありがとうございます。」
赤ずきんは猟銃を手にして颯爽と部屋から出て行った。
木の扉が閉まる。
「頑張れ!」
村人の応援が背中に感じながら森へと目指した。
「それにしても、赤ずきんも大変だな。
ストーカーに追いかけて回されるなんて。」
「追いかけ回されるレベルの話じゃねぇよ。あれからもう10年経ってんだ。」
「あら、そんなに経つかしら。そういえば昔あの子も可愛いかったのにね。なんであん何なったのかしらね、ホント。」
「赤ずきんさんも面倒みる嫌だろうな。それより見つけたお礼考えないとな、俺の庭あのストーカーに荒らされたから。」
残された村人達はワイワイと談話した。
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