異世界にて②
わしは馬車に揺られていた。
二人は馬車で旅をしているようだった。
「うーむ…」
「あら起きたのアルナちゃん」
「セレナよ次の町にはまだつかないのか」
「もう少しよ。町じゃなくて村だけど」
「そうか」
わしは物思いに耽る。
この幼女の姿になってからというものどうにも感情が不安定じゃ。
まるで心まで幼女になってしまったような…
そして天界に帰るためには神力が必要不可欠。
そしてその神力を得るためには人々による信仰が必要なわけじゃが。
わしが力を取り戻すにはわしが神であることを人々に信じさせる必要がある。
じゃがそもそも信じさせたところでこの世界でのわしへの信仰は失われておる。
さて、どうしたものかの……
「着いたぞ」
アルクの声に顔を上げる
「村じゃ」
着いたのはさびれた村だった。
「よう。お嬢ちゃん。何にもないところだがゆっくりしていきな」
馬車から降りると男がいた。
ふむ。村人Aといったところかの。
「早速だが広場に案内してくれるかの」
「わしは知恵と享楽の神アルナンクトゥスじゃ。衰退した世界を救うために人の身をかりて現界したのじゃ」
わしは広場にあつまった十数人にむけて言った
「お~それは有難いこってすなぁ」
老婆が言った。
「ほんにほんに。お嬢ちゃんが世界を救ってくれるのけ?ありがたやありがたや」
別の老婆が言った。
「はっはっは。いやぁお嬢ちゃん面白いこと言うねぇ。最近の子供の遊びは神様ごっこがはやってるのかい?」
筋骨たくましい男が言った。
「まぁ、何かこまったことがあったら行っておくれよ何せ神様の頼みだからねぇ。あっはっは」
おばさんが言った。
「そりゃそうだわな。さてそろそろ仕事に戻るか。がははは」
おっさんがそういうと示し合わせたように皆散っていった。
「わしは神なんじゃ…本当なんじゃ…」
「信じますよ。ああ神よ」
皆去っていったと思ったら一人残っておった
「僕は貴女の姿を一目見た時からその神々しさに参ってしまいました。そんな貴女は私にとっては紛れもない女神です」
「う、うむ、そ、そうか」
若干だが力の上昇を感じた。
なんだか変なのが釣れてしまったようじゃが信者一人確保じゃ。
わしは早速アルクとセレナを呼び出すと神力を使って見せることにした
「見よ。神力!」
手のひらからろうそくの火くらいの炎が出た。
「ど、どうじゃ」
わしは二人を見る
「おーよしよし、よくできたな」
「そうね、凄いわ。その調子で頑張ればきっと魔導士になれるわよ」
ん?こやつ等驚いていない?というか魔導士じゃと?
「ま、まさかおぬし等魔法が使えるとか言うまいな…」
「ん?使えるぞ、俺は魔法剣士ってやつだな」
「私は魔導士ね」
なんじゃと!?恐れていた事態が…ここは剣と魔法が飛び交うファンタジーな世界じゃというのか。
自分で何度も送り出しておいてなんじゃが勘弁してくれ。
わしは今信仰を失って神力をほとんど使えないんじゃ。そんな中で魔法が普通にある世界でどうやって信仰を集めろって言うんじゃ…
これというのもユウクアウラヌスあやつのせいじゃ……ぐぬぬ……
「どうすればいいんじゃ…」
わしらは村をブラついていた。
「そう気を落とすなよ。その年で魔法が使えたんだ。才能がないわけじゃない」
「そうよ。今から頑張ればきっと将来はいい魔導士になれるわ」
わしは魔導士になりたいわけじゃない。そもそも炎を出したのは神力で魔法じゃないのじゃが。
目の前を親子連れが通る。子供がきゃっきゃっとはしゃいでおる。5歳くらいの女の子供じゃ。
「子供はいいのぅ…悩みがなくて」
「お前も子供だろうが」
縛らく眺めていると子供が転んだ。
「うぅ。痛いよよ~」
うわ~んと子供は泣き出してしまった。
「おぉおぉ。どれ見せてみろ」
膝をすりむいていた。
「ふむ」
わしは神力を使って傷を治してやった。
「わぁ。すごい!お姉ちゃん。ありがとう!」
それを見たアルクは言った。
「お前治癒魔法が使えるのか…」
「魔法ではない神力じゃ」
その様子を見ていた母親は呟いた。
「聖女様…」
聖女?わしは神じゃ。
わしが首を傾げていると
「治癒魔法は高位の神官と聖女しか使えないんだ」
とアルクは言った。
「聖女様。我が子の傷を治して頂きありがとうございます」
若干だがまた力が高まるのを感じた。
ほほぅ。そうか聖女か。わしは閃いた。
神として信仰されないのなら聖女として信仰を集めればよいのじゃ。存分に聖女の名を騙ってやろう。
「フフフフ…」
「?」
「?」
こうして偽聖女大作戦の幕が開けたのだった。
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