第7話 力に目覚めた日 その7
男子と女子の寮はどちらも学校の敷地内にあるが入口が異なるため、途中で女子陣と別れた。
とはいっても、寮の中は完全に個々で過ごすための作りになっており、入ってすぐに男性陣も解散した。
食事がつくといっても弁当が届けられる形式らしく、寮の作りは食堂のような共有なスペースは意図的に無くされているとのことだ。
勇馬は楽しさと興奮で疲れを感じてはいなかったが、シャワーを浴びた後は寝るまであっという間だった。
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翌日、届けられた弁当を食べ準備を終えたら特対コースの教室に登校する。
敷地内に寮があるおかげで登校まで10分もかからないため、8時半までに登校とはいってもずいぶんゆっくりとできた気がした。
九條先輩の号令に従い、6人で瀬尾先生に挨拶を行うと
「それじゃ、朝のホームルーム始めるぞ。今日は特に連絡事項ナシ。お前らはすっかり打ち解け合えたようで何より。授業はまじめに受けること。ハイ解散」
瀬尾先生のホームルームはあっという間に終わった。
九條先輩曰く、瀬尾先生は教官としてはとても尊敬できるが、そこそこに放任主義で自由人で色々と雑とのことらしい。
午前中はコースに関係なく各学年で授業を受ける形式なので、先輩や後輩と別れ、七草と八神の3人で一緒に教室を出て授業に向かった。
今日の授業は1時間目が国語、2時間目が英語、3時間目が世界の呪術組織について、4時間目が三大呪術に関する説明だった。
どうも、五教科で2時間、呪術関係の授業で2時間というのが午前中の基本的なカリキュラムらしい。
中退かつ転入という勇馬にとっては1、2時間目はともかく、3時間目と4時間目は分からないワードが多すぎて授業がとても長く感じた。
「いや……厳しいこれ……ほとんど分からん」
「座学無理〜眠くなるよ……」
とうなだれる勇馬と七草を背に、やっぱりイギリス視点と日本視点では呪術組織へのとらえ方が違って面白いと八神がご機嫌だった。
やっとの思いで午前中の授業を終えると、その後は当然のように3人で学食に向かった。
学食は昨日と比べるともちろん混んでいたが、全員分以上の席があるらしく、選んだ食事を受け取ると余裕をもって座ることができた。
「ウチいつも思うんだけどさ、なんで学校は午前も午後もずっと訓練にしないんだろ」
と七草はミートスパゲッティをフォークでクルクルしながら不満げにぼやいていた。
「それは、学校は学ぶところだからね。授業があるのは当然だろ」
八神がうどんを冷ましながら若干空気を読めない発言を返していたが、
「そりゃ勉強も大事なことは分かってるけどさぁ……そういうことじゃないんだよぉ……」
七草が返す言葉にいつもの元気さはなかった。
そこに八神は、「将来的には世界のどこかの呪術組織と戦うことだってあるかもしれない」と正論だがさらに空気を読まないフォローを続けていた。
「まあ、八神の言うことも分かるけどさ。やっぱりずっと机に向かうと疲れるよなぁ」
と勇馬が苦笑しながら言う。
「それね! でもさ、天之も昨日は結構頑張ってたじゃん。どんだけ訓練施設にテンション上がってたか、ウチ知ってるんだからね?」
機嫌を戻したのか、顔を輝かせ七草がフォークを振り回してからかうように言うと、勇馬は少し恥ずかしそうに肩をすくめた。
「いや、あんな施設初めて見たし、正直すごいと思ったよ。呪術ってこんなに深いものなんだなって」
「それが分かっただけでも大収穫だよ。次の実践訓練のときはもっと驚くと思うけどね」
八神が微笑みながらそう付け加えると、勇馬は期待と不安が入り混じった表情を見せた。
「午後の訓練、楽しみにしてるよ。でも、ちょっと怖い気もするな」
「大丈夫! 怖がることないって。ウチらがついてるし、何かあったら八神が助けてくれるでしょ?」
「え、なんで僕?」
「そりゃ、お勉強がおできになる優等生様だからでしょ?」
調子の戻った七草の軽口に八神は苦笑いしながら、まあまあ、と手を振って落ち着かせていた。
勇馬はお気に入りのカレーを食べながら、適当に相槌を打ちつつ、午後の訓練に思いをはせていたところで言葉がこぼれた。
「そういえば、カレーは毎日食べても飽きないな。神様に感謝だよ」
その言葉に、七草と八神も思わず吹き出し、食事の席は和やかな笑い声に包まれた。
もうすぐ真剣に訓練を行うとはとても思えない楽しい昼食だった。
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