第26話家族になるために1

 俺はこれから何のために生きればいいのだろうか、あそこで了承してしまったがやはりこの家族のために俺はすぐにでもこの家から出て行かなくてはならない。だが誠二さんの優しさを無下にしていいものだろうか。ベットにうつ伏せになり、ただただ意味のない時間が過ぎ、同じことが頭の中でぐるぐるとかき混ざる。自分のことが心底気持ち悪くてたまらない。

「フゥーー」

「あんた、まだいたの?」

 顔を上げドアの方向を見ると、今朝よりも鋭い目で少女が俺のことを見ていた。

「君は、、」

 体をベットからお越し尋ねると、少女は強張った顔を緩ませゆっくりと近づいてくると、俺の胸ぐらを強くつかむ少女の表情は人に向けるものではない。

「私は、美羽ミウあんた蒼梧って言ったかしら。他人がまだ、なんで家にいるわけ。この家に帰ってきていいのは、」

「何を話しているのかな?」

 後ろから声をかけられ美羽は、ビクッと肩を上げを声の聞こえた先を見ると、誠二さんがニコニコと俺たちをしていた表情を開いたドアから半身だけひょっこりと出していた。

「パパ。」

 美羽は、小くか細い声で呟くと掴んでいた手とゆっくりとほどき、哀れむように誠二さんのことを見ている。誠二さんは、こちらに向かって歩み寄り美羽の頭を優しく撫でる。

「喧嘩かい?ぶつかり合うことは仲良くなるための第一歩って言うぐらいだしね。」

 誠二さんの顔を見た、美羽は目をほんの少し涙が浮かんでいた。

「関係ないわよ、仲良くなりたいとか。私はこの家に他人がいることが耐えられないだけだから。」

 優しく撫でられていた手をのけて、美羽は部屋を立ち去ろうとドアの方へ振り向く。

「ちょっと待って。」

 誠二さんは立ち去ろうとしていた美羽を引き止め、ドアの方へ向いていた彼女の体をくるりとこちらの方に向た。

「君たちに少し、お願いがあるんだ。」

 美羽は誠司さんに怪訝けげんな表情を向けたと思うと、すぐさま俺を睨んだ。それを見た誠二さんは少し不適な笑みをした。

「2人でおつかいに、行ってほしいんだ。お互いの身の上話もついでにね。」

 誠二さんはそういうと、俺に財布を投げ渡し駆け足で部屋から去ってしまった。

どうすんだよ、この空気。

「仕方ないわ。こうなっちゃうとあの人、意地でも行かせようとしてくるから。」

 美羽は先程とは違い少し嬉しそうな、顔をしていたが何かを思い出したかのように、眉間にシワを寄せる。

「あんたの話、少しくらいは聞かせてもらうわ。でも仲良くするとか思わないで。先に玄関で待ってるから。」

 美羽は、部屋から出ていく姿を見て罪悪感を感じている自分がいた。家族でもない俺がここまで気を使わせてしまていることが、耐えられない。やはり身の振り方を決め次第すぐにこの家から出よう。

俺はここにいては、いけない存在なんだから。

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