生きてみよう。
初乃 至閉
生きてみよう
生きていよう
世界一になった時また会おう。
僕が有名になるから僕をまた見つけ出して。
そのために僕は頑張るから。天使だなんて言われるくらい高く高く世界中を飛び回るから。
そんな約束をして僕は三十路を迎ていた。僕は結局何を成し遂げるわけでも無くただただ彼女との思い出とその約束の本質はなんだったのか、僕がこうして生きているのは異質な事なのではないか。
等々、つまり、日々暇なのである。
あんな事を堂々と言えてしまった自分はまあ勇気があった若者だったなだなんて綺麗ことにでも納めておきましょう。
高校二年生の頃先輩と出会った。先輩は僕に美醜を教え教育者の様に僕と触れてくれた。たまに先輩は、授業中僕をトイレに呼び出しまた、「悪徳、美醜。。」だとか自分に酔った事を言いながら笑っているのか泣いているのか解らない表情で僕と美醜の醜であろう事をしてくれた。
でも僕は先輩に彼氏が居ることを知っていた。僕は罪悪感なのか嫌悪感なのか、でもそれでも初めての先輩初めて、騙されたのも何度でも思い出せるように手紙や小説を書いてくれたのは先輩だった。先輩と仲良くなったのには僕が初めてだったから。きっとそれが無ければ嫌われていたでしょう。世界が毎日変わっているのも他人が死のうとも余程のことではない限り人類は生き続けてしまう。生きていく故に苦しい思いや心臓が痛めつけられるのであろう。そんな感覚を物体、生物にした様な人が先輩だった。先輩と学校外で会う時は大体僕の家か、カラオケだった。
カラオケといっても歌は歌わず哲学や歴史について自分の中野自分やお互いについてよく話し合って疲れたらお互い座り込み頭を寄せ合ってなぜか一緒に泣いてみたり。そんな僕にとって異質な日々はこのまま幸せになると思っていた。愛されちゃいたいと思っていた、世界が毎日変わっていくように僕等の様な知沙な存在は破滅するものでした。それは卒業というものもありました。
先輩のいなくなる高校、先輩と会えなくなる気がしました。
そんな事を思いながらも初めて自分から先輩を遊びに誘ってみました。
ぎゅっと心臓がなりました。
「先輩、今度の土曜日、神保町にでも行きませんか?」先輩は疲れた様な、作られているようなため息をこぼしたと思うと
すぐに顔色を変えて「いいよ!行こう。」 なんてニコニコしながら僕と神保町へいつか行きたかったのだよなんて話してくれました。
僕はほっとしました。携帯番号も聞いて、待ち合わせも前日まで連絡を取り合って、先輩は学校を卒業しても僕の先輩でいてくれるだなんて安堵していました。
土曜日、先輩は約束の時間に、来ませんでした。何度もメールや電話をしました。僕は、僕に、僕の、何が悪かったのか考えました。わかりません先輩の気まぐれな遊びに付き合わされていただけなのでしょうか。頭の中が先輩ばかりになっています。先輩に何度も何度もメールを送りました。
「僕の何が気に障ったのでしょうか、ごめんなさい。
僕何かしましたか、ごめんなさい。」
「僕は時間通りに待っていたのにどうして裏切ったの。酷いよ」
「なんとか言えよ裏切り者。僕はお前のせいで傷ついたんだぞ」
「死んでしまえ裏切り者、何が美醜だお前は醜い女の癖に相手がいながら僕のこと弄んでいた癖に。裏切るだなんて一丁前の事して」
足掻いても無駄でした。その日以降先輩からの連絡もつかなくなってしまいましたし、僕も憎しみと悔しさで・・・・・・・
時の流れは遅く傷心した僕は自暴自棄に誰彼構わず引っ掛ける欲しがり、愛されたがりになっていきました。これだけ期待させ、勉強させといて。先輩のことを一度忘れてしまいました。いろんな人に好かれようと、皆んなに愛されるよう愛されたい貪欲さと共に欲求別に人を選んで、何年も、何年も思い出さない様に取っ替え引っ替えしてきました。思い出したくない、所謂黒歴史だったので誰にもいうことはありませんでした。
ある時、当時の彼女と海に行きました。夕日の沈む海だなんてロマンチックねえだなんてこんな汚い東京湾がなんのロマンチックだ、と思いながら僕は頷き相槌打ちながら携帯を見ていました。先輩とのメール。一年前に返信が来ていました。
心臓がまた、脳が、心が、先輩でたくさんになりました。
あれから僕は何も変わっていなかった。一枚の写真が送られていました。
あの日の土曜日、ださいバンドのシャツを着た僕を遠くから撮影した写真でした。
先輩は、来ていたんだ。ならどうして、それ以降の連絡も何もかも僕の先輩じゃなくなったのだろうか。顔が良くない、愛想が良くない、頭もを類し、あああああ全てやり直せていたら先輩は僕とまだ遊んでくれていたのだろうか。
「ねえ聞いてる?ゴハン、どーするの?」
彼女の問い掛けなんかもう鬱陶しいただ僕はまた先輩に会えるんじゃないかって期待して涙が流れそうでした。
彼女に、「お手洗いに。」とだけ言って自分の部屋に帰りました。
彼女からは「半年の記念日がこれならばもう別れよう。突然帰るだなんて・・・」なんて今の僕には口うるさい長文が送られてきていた。それを無視しメールのやり取りや先輩と聞いた音楽や、小説や、色々また一から勉強し直す様に漁っていました。
一年前、あの日、八月二十九日は明日。僕が先輩を神保町に誘ったあの日は明日。
奇跡なんて無いと赤っていてもあの人同じダサいバンドのシャツを着てあの日約
束した時間に神保町の待ち合わせ場所の書店に行こう。
その夜は眠れたものじゃなかった。もしかしたら、先輩に、先輩が来ているのかもしれない。今年の八月十九日は金曜日でした。彼女からの電話は着信拒否してしまいました。先輩、先輩僕を捨てないで。そんな思いで心が痛くて一晩で煙草を全て吸い切ってしまいました。真夜中歩いたのは初めてでした。案外空は明るくて、心地よい風が吹いて先輩への思いが募っていきました。
朝になりました。約束の時間は十三時。僕はあのダサいバンドのシャツ着てあの神保町の書店に行きました。先輩がいなくなってからというもの、僕は小説どころか、本全般から逃げてきました。先輩の好きだった音楽も本も。僕は手の届かない場所に僕だけのものとして置いておきました。
あの書店で僕は一冊本を手に取り白々しく閉じたり開いたりして、周りをキョロキョロとして何時間もその書店の周りを彷徨きました。
やっぱり先輩は来ませんでした。 その書店が閉まるまでうっと待ていた僕が惨めでやはり僕は救われない、僕は一生このまた裏切られたという呪縛から逃げ続けなければいけない。そう感じていました。
僕の初めには先輩がいる。一通ただ僕はまたメールを送りました。
有名になったら僕を見つけて、認めてください。きっと僕は、先輩と僕は上で逢えると思うのです。先輩が天使。僕は貴女の所為で作家になります。だからあなたに見つけて貰うまで文章を書き続けます。
そんな内容だたと思います。僕はその文章をその書店の前で気違いの様に何度も叫びました。先輩からメールの返信が来ることはありませんでした。
あれから何十年と経った今僕は文章すら描いていないし、先輩の事は青春の一部として消化して今ここに三十路になっていた。
先輩を一瞬でも恨んでいた時の僕はきっと先輩から習った美醜をぶつけていたのでしょう。だって、じゃないと人に話したり、こうして文字に起こさないから。
美しくなんか無くたっていい。みんなが特別だなんて、勿論僕らだけが特別じゃなくて、みんな普通。いたんだなんて存在しないモノになりたかったんだ。
若い考えだったなと思う。
今思えばあの僕の言葉は綺麗事でしかなくて明日に希望を持って生きるように先輩が、弱い僕に与てくれた試練だったのかもしれない。
きっと本質はやはり共通了解を得られなかった、見向こうとしなかった僕達二人が産んだ憎悪だった。僕らはずっと異端じゃなくて普通だった。世界に酔い過ぎていた。まあそんな活力がなくなった今だから気づけた事と思う。
人々はできない約束をするなだとか、言葉に責任を持てだとかいうけれど。嘘つきな僕は本当に思った事はこうして見える媒体に表すし、それがアナログだなあなんて思われるだろうけどこれが僕の魅力だから。口先だけの僕にやれることは先輩の幸福や好調を静かに願うこと。僕の人生と、僕の何気無い日常と向き合うこと。
それは暇なんかじゃなく充実だと思う。今じゃ先輩を誘ったあの書店で働いているけれど、そろそろ自分の方に舵を切り出すべきだと僕は辞表を提出した。
さようなら先輩。そして初めまして僕。
誰かに見つけて貰うために、見て貰うために表現してきたものなんか捨てて僕だけのために、表現をしよう。
生きていよう。
そう思った八月後半でした。僕は今も生き続けています。自分に酔いながら真夜中に散歩する日常のお話です。
生きてみよう。 初乃 至閉 @hatsunoshihei
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