佐々木修は、自分を現実主義者だと思っていた。

鏡の前に立ち、自分の姿をじっくりと見つめた。特にハンサムでもなければ、醜くもない。眼鏡を鼻にかけていても、典型的なオタクのようには見えない。

そして、純粋無垢？いいえ、もうそんな自分ではないと自負している。成長する過程で、彼は最弱の子供としていじめられ、サバイバルするために適応を強いられた。だが、今や18歳の彼は、大人になることで得られたたくましさに感謝している。

修は、新水大学の学生として典型的な一日を過ごしていた。

彼はコンピュータサイエンスを専攻しており、いつも大切に扱っている高性能のラップトップと共に行動していた。忙しい大学の廊下を歩きながら、授業へ向かっていた。

すると—

バタン！

考えに夢中になっていた修は、誰かの足元に気づかず、靴がその人の足に引っかかり—

バキッ！

何かが壊れる音が響き渡った。彼は凍りつき、事故の現場を見つめた。靴が真っ二つに割れていた。

「ちょっと！何してるのよ！」鋭く驚いた声が響いた。

修の視線が上がると、そこには彼を睨みつけ、壊れた靴を見つめる少女が立っていた。金髪の染めた髪が、ファッショナブルな顔立ちを引き立てている。トレンドの服装にきれいに整えられたネイルが、彼女がギャルであることを物語っていた。

「あっ、ごめん！気づかなかったんだ！」修は驚いて一歩後ずさり、壊れた靴にショックを受けていた。

ギャルはしゃがみ込んで壊れた靴を脱ぎ、注意深くそれを観察した。そして、ため息をついて疲れたように言った。「はぁ…新しいのを買うしかないわね。」

「待って！僕が直すよ！」修は、償いのために必死で提案した。

彼女は驚きと疑いが入り混じった表情で彼を見上げた。「いや、大丈夫よ。どうせ古かったし。」

このまま放っておけない、と罪悪感に苛まれながら彼は思った。

「まだ歩き回る必要があるだろ？すごくいい接着剤があるんだ。」修は決意を込めて提案した。

「本当に…？」彼女は彼の顔を見つめながらためらった。

「うん、直させてよ。本当にごめん。」修は強く言った。

廊下のベンチで、修は壊れた靴を慎重に接着剤で直していった。

「本当にごめんね、こんなことになるとは思わなかった。」修は心から謝罪の言葉を口にした。

ギャルは彼の作業を見守りながら立っていた。「いいのよ。さっきも言ったけど、どうせ古かったし。」彼女は何気なく答えたが、彼の手が靴の部品をしっかりと押さえつけている様子に目が留まっていた。

「君はファッションデザインの専攻だよね？えっと…名前は…」修は思い出そうとしながら話し始めた。

「熊谷美春。」彼女は小さな笑顔を浮かべながら名乗った。「よろしくね。」

修は頷いて微笑み返した。「佐々木修だよ。」

「専攻は何？」美春はベンチに座りながら尋ねた。

「コンピュータサイエンスだよ。」修は靴に集中しながら答えた。「ファッションデザインほど華やかではないけど、僕の得意分野なんだ。」

「コンピュータサイエンスかぁ。」美春は頭を傾げ、廊下のライトに照らされて金髪が輝いた。「じゃあ、得意なんだ？」

「まあ…そんな感じかな。」修は天井を見上げて照れ臭そうに言った。

実際、修は得意というよりも、技術オタクとしてフィールド内で平均以上の成績を収めていた。

最後に彼は修理した靴を彼女の足に優しく履かせ、直立した。「これでよし。改めてごめん。」

「大丈夫よ。」美春は小さく笑いながら答えた。「次はボーッとしないようにね。じゃあ、授業に行かなきゃ。あなたも遅れないようにね。」

そう言って彼女は軽く笑顔を見せてから歩き去った。その歩みは今やしっかりしていた。

修は美春が去っていくのを見つめながら微笑み、その後自分の教室に向かった。

***

昼休みの間、キャンパスは活動で賑わっていた。学生たちは友人と食事をしたり、室内ジムや外で遊んだり、会話や笑い声で空気を満たしていた。しかし、修は他の学生とは違っていた。彼には別の隠れ家があった。それはプライベートな作業スペースだった。

厳密に言えば、ただの古い倉庫だったが、修にとってはガジェットやツール、プロジェクトが詰まったラボだった。現在、彼は友人のノートパソコンを修理していた。

「修、俺のノートパソコンはどうなってると思う？」友人が彼の作業を見ながら尋ねた。

修は慎重にマザーボードを検査し、視線を上げた。「このノートパソコンでどれくらいゲームをしてる？」

「えーっと、うーん…ほとんど毎日だよ。」友人は視線を逸らしながら答えた。

「トリプルAのゲーム？」

「うん…」

「超高設定で？」

「そうだね…」友人は気まずそうに頷いた。

「休ませずに？」

「まあ…そしてたくさんのことを同時にやってる。」彼は首の後ろを掻きながら認めた。

修はため息をつきながら頭を振った。「ノートパソコンが焼けちゃってるね。でも大丈夫—修理できるよ。少し時間はかかるけど。」

「ありがと、修！授業が終わったらテキストして。費用は全部払うから！」友人は急いで部屋を出て行った。

彼が去った後もドアは開け放たれていた。その数分後、美春が廊下に現れた。彼女は開いたドアに気づき、中を覗き込んだ。

今朝のあの人… 何をしてるの？それにこの倉庫がこんなに…進んでるなんて？

好奇心に駆られた彼女は軽くノックした。

コンコン。

修はノートパソコンから目を上げて彼女に近づいた。「あ、君か…」

「熊谷美春です。」彼女は小さな笑顔を浮かべて言った。「ここで何してるの？それにこの電子機器は何なの？」

「えっと、まあ、」修は頭を掻きながら答えた。「ここは実はサーバールームなんだ。でも、ディレクターが僕に小さなラボとして使わせてくれてる。」

「ラボルーム？」美春は繰り返しながら中に足を踏み入れた。彼女はさらに近づき、部屋を見渡した。散らかったネジ、分解されたノートパソコンの部品、そしてサーバーマシンの一定の音が部屋に充満していた。

修は作業に集中し続け、マザーボードのコンポーネントをテスターで確認していた。

「食べてないの？」彼は視線を上げずに質問した。

彼女は突然の質問に驚き、すぐに答えた。「あ、うん、もう食べたよ。で…何を修理してるの？」

「これ？」修はテーブル上の分解されたノートパソコンを指差した。「友達のゲーミングノートパソコンだよ。彼は超設定でずっと使い続けててマザーボードが焼けちゃったんだ。」

美春は彼の作業を見つめながら首をかしげた。「それはちょっと無謀ね。」

修は小さく笑った。「ちょっと？それは控えめな表現だよ。でも救いようがないわけじゃない。交換チップと半田付けが必要だけどね。」

彼女は再び部屋を見渡し、棚に並んだ様々なツールやガジェットに目を止めた。「ここには色々なものがあるのね。こんな風にいつも修理してるの？」

「ほとんどね。」修は半田ごてを取り出し、温め始めた。「テック関連ならたぶん直せるよ。ノートパソコン、携帯電話、ゲーム機—何でも。」

「それってちょっとすごいわね。」美春は腕を組みながら言った。

彼は笑った。「ありがとう。滅多に褒められないんだ。」

滅多に褒められない…これってすごいじゃない。彼はまるで何でも直せるみたいだし… それにディレクターがこの部屋を使わせてくれて、あの大きな機械も置いてあるし…

彼女はもう少し彼を見つめながら考え込んでいた。そして、少しトーンを変えて口を開いた。「電化製品を直せるんだよね？」

「そうだけど… どうして？何か直して欲しいものがあるの？」修はやっと彼女の方を見ながら尋ねた—だが彼は彼女がどれほど近づいていたかには気づかなかった。

二人の顔が赤く染まった。美春は急いで後ろに下がり、小さく頷いた。「実は…洗濯機が水を排水できなくなっちゃって…」

修は椅子を回して彼女に向き直り、興味をそそられた。「何があったか教えてくれる？普通だったのに、突然その問題が現れたの？」

美春は少し躊躇いながら足元に視線を落とし、再び彼の目を見つめた。「うん… 普通だったんだけど。最初は何もおかしいとは思わなかった。でも数日前から、サイクルが終わった後にドラムに水が残るようになったの。ちゃんと排水されないみたいで、今はそのまま止まっちゃってる。」

修は考え込んで頷きながら、指でテーブルを叩いた。「ふむ、排水管が詰まってるか、ポンプに問題があるかもね。変な音はしてない？」

彼女は首を振った。「いいえ、特に変わった音はないわ。ただ… 排水が止まっちゃってるの。」

修は顎に手を当てて考え込んだ。「うーん、君の家に行って見てみようか？」

美春は少し驚いた。「え、来てくれるの？」

「えっと… うん、いいよ。僕が助けられるなら…」修は少し気まずそうに言葉を濁した。

「じゃあ、私が都合のいい時に連絡するから番号を教えてもらえる？」

これはいいチャンスだ、修…彼は心の中で興奮を隠そうとしながら思った。

「うん、いいよ。」彼は携帯を取り出した。

続く