すすきの「血の花」

すすきのの闇は、ネオンの光でさえも消し去ることのできない深淵です。かつてのソープランド「黒百合」の経営者、龍二は、その闇を知る男でした。彼は、美咲という女の話を恐ろしげに語りました。


「美咲は、客に酷い目に遭わされ、助けを求めたとき、業界の魔の手によって再び絶望の淵に叩き落とされた。彼女の死は、雪の降る夜、路地裏で、血が凍りつくまでに冷たくなった。死後、彼女の怨念はこの街を血塗れにする。見た者、聞いた者は、我が身を引き裂かれる恐怖に襲われるんだ。」


その夜、ホストの健一が笑い飛ばした後、店内は静寂に包まれました。突然、照明が爆発し、部屋は真っ暗になりました。そして、鏡から流れ出す血に気づいた健一は、恐慌に駆られました。鏡から出てきたのは、美咲でした。彼女の顔は半分が腐敗し、目玉は白濁し、口からは黒い虫が這い出していました。


「なぜ、私を見捨てたの?」美咲の声は、まるで喉の奥から引き裂くような音でした。健一は逃げようとしましたが、足元には血の海が広がり、彼はそこに引きずり込まれました。美咲の手は健一の胸を裂き、彼の心臓を握りつぶしました。健一はその痛みに耐えながら、美咲の受けた苦しみを体感しました。


健一の体は、美咲の怨念によって内側から崩壊し始めました。皮膚が裂け、内臓が露出し、その血で店内が染まります。鏡には、美咲と健一の混ざり合った姿が映り、彼女の顔は笑みを浮かべていました。


翌朝、店内では健一の存在が消え去り、代わりに美咲の腐敗した亡骸と、血の池が残されていました。店の各所から美咲の笑い声が聞こえ、鏡には常に彼女の姿が映るようになりました。


今でも、すすきのの夜を歩く人々は、美咲の怨念から逃れるため、決して「黒百合」の近くを通らないようにし、夜の闇に身を潜めるのです。

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