最終章 廃部寸前の高校美術部に女神降臨

第1話 山嵐高校美術部存続の危機に救世主降臨?!

 現代の高校の美術部に入部した豊瀬日向とよせ・ひなは、思うように水墨画が描けず悩んでいた。そこに花魔法の女神花垣花丹はながき・かたんが降臨した。花丹は日向と日向のひとつ上の先輩である諸見里健もろみざと・けんに水墨画の新たな表現・技法を教えた。

 日向と健は更に魔法が使えるようにと花丹から魔力を得た。


花丹が去った後、古澤黒恋ふるさわ・こくれんが美術室に来た。今度は暗黒神の黒原院龍こくばらいん・りゅうを連れて。

「どれがお前のだ?」

「窓際の隅に掛けられているのが私の作品よ」

「ツヤがないな。墨の濃さも足りていない。俺様が教えてやろう」

 古澤は暗黒神の言う通りに描いた。実際、墨がだいぶ濃く出てつやのある質感の草花が描けるようになった。

 古澤もまた、神は違えど魔法をもらって描いたのである。

 古澤が描き上げた頃には日向と健は自分たちが数週間前に描いた作品を壁から剥がして、新しい技法で描いた水墨画を飾り終えていた。

 それぞれが再び水墨画を描く練習をしていると、顧問の富永圭三が来た。

 作品制作中の三人の視線が富永の目に集まる。

 富永は日向と健の絵に強く惹かれたらしい。二人の絵の前から離れない。

「これとこれは不思議で神秘的な作品だね。まるで生きている草花のようだ。全体的に草花が立体的に見えるのが不思議だね」

 古澤が立ち上がる。

「先生、わたくしの絵はどうですの?」

「描かれている草花に生を感じない」

 古澤は片手をぎゅっと丸めた。さぞや悔しいのだろう。古澤は描き直す。

 

 翌日。美術部に体験入部するためにたくさんの生徒が美術室に吸い込まれてった。

 皆、日向と健の水墨画に魅せられている。

「諸見里先輩、これってどうやって描いたんですか? 草花の立体感とみずみずしさが素晴らしいです!」

「これ、日向が描いたの? すげーじゃん! 俺もこんな作品描けるようになりてぇ。どうやって描いたんだよ?!」

 日向と健は口を揃えてこう言った。

「それは正式入部してからのお楽しみ!」

 その後、体験入部した全員が正式入部した。

 日向と健は正式入部した生徒に水墨画の新技法を用いた描き方を教え、魔力をわけ与えた。

 その日のうちに、皆がリアルな水墨画を描くことに成功。次はコンクールに向けて皆、水墨画の練習に励む。

 水墨画が得意分野の古澤も気合が違う。

 今度は暗黒神の指示通りに描いたことで、顧問の富永先生も称賛した。

「墨の濃さも程良いし、全体的に立体感とみずみずしさがあって良い」

と、ようやく高評価を得たのである。



 夏休みに入っても日向と健は暑いなか登校し、美術室に入ってコンクールに向けて作品制作に励む。

 その前に、花丹が再び降臨し、水彩画の新技法を教えてくれた。

 水彩画に挑戦したのは健だけで、日向は水墨画で勝負することにした二人だ。

特に日向は古澤をライバルとして意識しているため、尚の事、水墨画で勝負したいのである。

 結果、日向も健も入賞した。

 しかし、ここまで辿り着いたところで満足する花丹ではない。

 花丹は次なる札を選ぶ。


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